【事例集】京都・美山「かやぶきの里」 ―里山集落はエコビレッジの原点
2008年
京都市内から車を走らせること約2時間の山里に、日本古来の農村風景と自然景観がマッチした民家集落が残っています。豊かな山の緑と綺麗な水の流れを持つ、自然美豊かな人口約5000人の農山村地域・美山町です。
ここには、現在日本に残るかやぶき集落としては3番目に大きな京都・美山の「かやぶきの里」があります。かやぶき建築数は、岐阜県白川村荻町、福島県下郷村大内宿に次ぐもので、伝統工法による建築物群を含めた歴史的景観の保存度への評価も高く、現在、文化庁の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定され、かやぶき屋根の古民家が保存されています。
それにしてもここはさすがに「日本一の田舎」を自称するだけのことはあります。ほんとうに田舎なのです。京都市内からバスを3本乗り継いでやっとたどり着きます。当然、近くにコンビニなんか見当たらない。温泉がないため、旅行者には物足りないところだけど、そのおかげといっては何ですが、観光地化されずに媚びたサービスをしていないところがよいのです。特産品店には、地元の産物だけが並び、無添加で加工された山菜や佃煮などが印象的でした。隣で作っているでき立ての雑穀素材の饅頭や餅も、素朴でおいしいものでした。
かやぶきの里には3軒の古民家民宿があり、素朴な地元料理で迎えてくれます。宿のご主人いわく、「ここは日本で初めての農家民宿」とのこと。なるほど、宿の前には畑があり、裏山がそびえ、そして綺麗な川の流れがある。自家栽培の有機無農薬野菜と、鮎や山菜、猪鍋などの季節の食材は、スローフードの原点ですよね。
森を守り、田畑を耕す自給自足で持続可能な里山コミュニティーのかたちは、エコロジー建築に携わる人たちや、海外のエコビレッジがお手本にする環境です。京都旅行の際には一足延ばして、素朴で癒やされる田舎の風景を体験してみてはどうでしょう。眼下を流れる清流「由良川」には、アマゴのキャッチ&リリース区間もあります。釣り好きにはヨダレものであることを付け加えておきます。