WORKS
事例集

薪ストーブひとつで家も心もぽかぽかに。
いつまでも大切に暮らしたい愛しのわが家

札幌市 Kさん邸 / 夫婦30代、子ども1人
床・家具・建具のほぼすべてが道産のトドマツ仕上げ。木の香あふれるリビングにはテーブルやソファを置かず、昔ながらのちゃぶ台を愛用している

札幌市の西側、山と川がそばにある自然豊かな環境にKさんの住まいはある。道産カラマツの素朴だけれどぬくもりあふれる外壁に、赤い屋根がトレードマーク。その温和な佇まいからは、住まい手の人柄がそれとなく伝わってくる。

感じのいい木の扉を開けると、奥さまがほがらかに迎えてくれた。「自然素材の安心な家に住みたかったんです」。ゆったりつくられた玄関には薪専用のスペースが設けられ、貴重な燃料となる薪がワイルドに積まれている。「どうぞ、どうぞ」と通された室内では鋳物のストーブが存在感を放ち、味わいある木の空間によく似合っていた。「うちの暖房は、このストーブ1台だけ。2階まで十分あったまるんですよ。火の暖かさって体の芯までじんわり。やさしい感じがいいですね」。そう笑う奥さまの表情がなんともほがらかだ。薪をくべるのもお手のものだという。天板に鍋をのせて煮込み料理をつくったり、ピザを焼いたり。今までにはない楽しみも広がった。

厳寒期でも火を焚くのは朝6~9時頃まで。その後は夜まで消したままでも寒さを感じないそうだ。窓はトリプルガラスを標準仕様とするなど、住まいそのものの断熱性能を高めていることが大きい。ストーブの上の吹き抜けをはじめ、回遊式の水回り動線など、空気の通り道を随所に設けたことも、住まい全体の均質な心地よさにつながっている。 

4歳の男の子とご夫婦の3人家族。素材や性能、すべてにおいて安全な家に住みたいと思うようになったのは、子どもが生まれてからだった。それまでにも合成洗剤は使わないなど、できるだけ環境に配慮した暮らしを心がけてきたが、子育てを機に食べ物のことを深く考えるようになり、家族の健康に影響する住まいの空気が気になるようになったのだという。

「無垢の木だけを使い、有害物質を発生させない素材を使った住まいづくりがいいなと。西篠デザインさんのことは前から知っていて、家を建てるときはお願いしようと決めていたんです。2年ほど前、薪ストーブのある古民家風の拓北の家を見学し、夫も納得してくれました」。

道産材を100%使い、どこかなつかしい雰囲気を漂わせるそのモデルハウスはご夫婦を魅了した。がっしりとした太い梁、趣のある板戸、柱をあらわしにした真壁など、豊かな表情はそのまま新居にも再現。ホタテ漆喰の塗り壁はプロの職人の指導を仰ぎながら、夫婦ふたりで4日かけて塗り上げたものだ。「ところどころムラがありますが、ご愛嬌ということで(笑)。住まいづくりに自分たちも手をかけられたのは、後々いい思い出になりますね」。

自然素材ならではのざっくりとした質感は、健やかに暮らしたいと願う家族の心をあたたかく包む。奥さまはできるだけ家具やモノは置かず、最少限の道具で生活したいという。もしかすると、空間の持つ力もこうしたライフスタイルを後押ししているのかもしれない。

天板のステンレス以外はすべて道産トドマツで仕上げたオーダーキッチンも、西篠デザインらしさのひとつ。キッチンは日常的にもっとも使用頻度が高く、衛生的で機能的、かつ安全性が求められる場所だ。無垢の木に植物油の天然塗料で仕上げた面材は有害物質を発生させることなく、質感もやわらか。食器や家電がおさまるたっぷりの収納と、外気を取り入れ低温をキープする食品庫を備え、使い勝手も抜群。なにより、そこに立つのがうれしくなるデザインである。昼食など一人の食事は対面カウンターで手軽に、というのも快適だ。 

キッチン以外に好きな場所はと尋ねると、迷わず「吹き抜け」との答えが返ってきた。「家じゅう家族の声が通るのが気に入っています。この家に住んでから思い切ってテレビを止めました。最初はどうかなと思ったのですが、すぐに夫も子どもも慣れたようで。かえって絵本を読んでとか、子どもとのコミュニケーションが増えたのもいいですね」。

もともとエコロジーへの関心が高かった奥さまだが、ここへ来てさらに磨きがかかる。なるべく電気を使わないように、掃除はできるだけホウキや雑巾を活用しているとのこと。北海道の木でできた手づくり感あふれる住まいを、自分で大切に手入れしたいと思うのは、ごく自然なことなのではないだろうか。

住まいの提案、北海道。vol.50掲載

木酢液仕上げのカラマツを使用したシンプルな外観。ちょこんとのった赤い屋根が愛らしく野鳥のクマゲラを思わせる
広い玄関土間の一角は、冬の薪置き場に。ホタテの漆喰と古色仕上げの無垢の木がベストマッチ
吹き抜けで2階とのコミュニケーションもスムーズだ
薪ストーブの上は吹き抜けに。長い煙突をかわして設けたキャットウォークは、窓を拭くときや
洗濯物を干すのにも便利なのだとか
江別レンガの敷台と背壁をつくって薪ストーブを設置。庭につながる大きな掃き出し窓が薪棚への近道だったりして
木の風合いがやさしいオリジナルキッチン。ガスコンロの背面には大容量の食品庫が
シンク左手の板戸を空ければ、浴室・脱衣所・洗濯スペースの水まわりがひとまとめに
キッチンからの視界も良好
オリジナルの洗面台の横には下着やリネン類が入る収納。右手の引き戸で玄関とつながる
現在フリースペースとして活用している2階ホールは、将来的に2室の子ども部屋にできるよう分割可能な設計に
寝室は布団で寝る畳の間。天井の勾配を利用して設けた口フトは、父と子の秘密基地に

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