この住宅は、当社が2020年に中古住宅として購入したものを、モデルハウス用としてリノベーションし、後に売却を目的として建てられたものである。2020年の冬から翌2021年春にかけて工事を行い、モデルハウスとして多くの方をご案内した。2022年にその役目を終え、当社ホームページで不動産情報として募集し、現在はすでに売却されている。
外観からは切妻の矩勾配に近い傾斜屋根で、一見するといわゆる公社によるブロック住宅を思わせるが、木造の在来工法である。しかし元の間取りはブロック住宅のタイプとほぼ変わらない。
リノベーションにあたっては、間仕切り変更、内外装改修、断熱改修、及び内部の住宅設備の交換と新規建具・造作家具など全体に及んだ。間取りは1階の小さな個室を台所に改修し、余裕のある作業スペースが確保された。元の台所はダイニングスペースとなり、家事コーナーと薪ストーブを新しい台所に並べて設置した。ユーティリティはスペースを広く確保し、壁には羽目板を張った。閉鎖的だった階段はスケルトンとし、開放的で明るい玄関ホールとなった。リビングはその開放的な玄関ホールから自然につながり、羽目板天井とナラフローリング、そして大きな開口の木製サッシと、木がふんだんに使われた空間となっている。2階は中央のホールを挟んで、開放的なスペースとしてつくられ、のちに用途に合わせて仕切りができるように施した。
今回着手前に、外観のデザインにおいていくつかのパターンをつくり、外装材や色の組み合わせを念入りに検討した。これは当時、ホームページのブログで検討過程をすこし公開した。外装で採用したのはガルバリウム鋼板の角スパン縦張りとイングリッシュレッド色の杉板横張り、そして最も大きな特徴である木製サッシの階をまたいで縦に連続したデザイン。これらの組み合わせがこの住宅の大きな特徴となっている。
内装はいつもの会社標準仕様を盛り込み、ミズナラの無垢フローリング、ホタテ貝粉末漆喰風塗り壁、和紙貼りなどの内装材の他、断熱材としてセルローズファイバーを使用。ほかステンレスカウンターのトドマツ材造作オリジナルキッチン他、道産木材による建具と家具など。
これまで培ったエコデザインを踏襲しながら、外観において新しい試みも行ったこの住宅は、新しいスタンダードを内包した自然派住宅となった。