既存住宅付きの西野の土地として当社で仲介した物件を購入し、リノベーションした。木造2階建て、築40年ほどの車庫組み込みの中古住宅で、敷地の北西側が道路に面し、南東は庭越しに川が流れている。道路面から土地の地盤面が高く、車庫の上が中2階で、階段の踊り場のレベルから部屋に出入りする構成となっている。元々車庫の奥行が、階段の存在が邪魔して1台分確保することが難しい構造だったので、階段の上がり方を変え、車庫の奥行をしっかり確保した。また車庫以外でもう一台駐車できるように、元の玄関までのアプローチだった屋外のスペースを1台分の駐車スペースにするために、地盤を道路面のレベルに合わせ、さらに玄関の位置を変更し、それにともないポーチと道路からの階段を新設するという大掛かりな工事を行った。これは本体の工事に先行して、足場を設置する前、雪が降り始める前に施工を終えた。本体は冬季の工事で、特に大雪の年だったために、除排雪などに苦労しながら進められたが、春から小学校へ通うお子さんのために、3月中に完成させ、引き渡すことができた。
リノベーションの概要としては、1階のリビングと和室がつながった元の空間はあらたにリビング・ダイニング及びキッチンと一体的な空間として再生し、アイランドタイプのステンレスキッチンのダイニング・キッチンには南東の大きな窓からたっぷりと陽が差し込む。元の玄関、ホール廻りは水廻りへ、元の台所を含む水廻りは玄関へそれぞれ間取りを変更した。中2階は車庫上の子供部屋1室、2階は子供部屋と寝室で、若干の壁の位置を変えただけで元の壁をほぼそのまま活かした
仕様としては元のモルタルの外壁は残したうえで、壁、床、小屋裏の断熱と付加断熱、及び新しい外装材張り、屋根の壁面は葺き替えでスノーダクトの陸屋根は既存屋根材の上にあらたに葺いた。またサッシはすべて樹脂サッシに交換。これらの仕様だけでなく、現在の耐震基準に合わせて可能な限り耐震補強を行った。壁量を計算し、不足の筋交いを入れ、金物で補強などした。
意匠的には、外観はガルバリウム鋼板のパネル状のサイディング張りと杉板による下見張り。金属サイディングと屋根は若いご夫婦の嗜好から色はブラックを選択し、サッシもブラックで統一した。ハードでかっちりした印象のブラックと暖かみのある無垢の板張りとのコントラストと、高さの異なるヴォリュームの構成がモダンながらクラシックな印象をも内包した独特の雰囲気を醸し出している。
内部はホタテ貝殻粉末塗り壁と土佐和紙、ナラ無垢フローリングなど仕上げ材、羽目板の壁と天井、及びトドマツ材によるオリジナル造作家具と建具などいつもの会社標準仕様を採用している。道産材と自然素材を使うという基本姿勢を保ちつつ、モダンさも兼ね備えた自然派住宅が完成した。