(2)合板の話
合板の接着剤に注意する
住宅を建てる時に使われる合板。最近、住宅の高気密化によるシックハウス問題などから、ホルムアルデヒドの放出量の少ない製品が手に入るようになっています。合板は木の原木を回転させ、大根のかつらむきのようにした薄い板を接着剤で張り合わせ、乾燥させたものです。
木と接着剤でできているものですから、接着剤の種類や合板の作り方によって、有害な化学物質の放出量も変わってきます。合板に使用する接着剤の中でもフェノール樹脂系は、ホルムアルデヒドの放出量が低いのですが、1950年、朝鮮戦争の時に大量の合板が必要とされGHQから発注された際に、米国で使われていたフェノール系接着剤を使わず、国産の安いユリア系接着剤を使ってしまったことが近年まで引き継がれ、シックハウスの原因をつくる一つの要因ともなってしまったようです。
安全な合板を選ぶポイント
ホームセンターに行ったら、まず合板に押されているJAS規格(農林規格)のスタンプを見てください。ホルムアルデヒドの放出量に応じて、「F☆☆☆☆」といったように、星のマークが表示されています。☆4つが放出量が最も少なく、数が減ると逆に増えていきます。ホルムアルデヒドを多く含む合板も、市場には平然と並んでいるのがわかります。JAS2類の合板は主に、外部に使うためのものと思われますが、誤って室内に使ってしまう恐れがあります。使用する場合は、F☆☆☆☆合板を指定してください。ただし、放出量がゼロではありません。使いすぎには注意しましょう。
最近は、構造用合板を室内仕上げ材として表側に使ったローコスト住宅を見かけます。床の複合フローリングを含め、壁・天井にF☆☆☆☆レベルの合板を使った場合でも、接着剤の種類によっては、室内の空気は悪化してしまいます。ホルムアルデヒドをまったく含まないイソシアネート系(水性ビニールウレタン)の接着剤を使った合板でも、万一、火災に見舞われた場合には、猛毒の水素ガスが発生してしまいますから、100%安全ではないのです。新築、リフォームの際は合板のチェックを忘れずに!
合板なしでも家は建つ
本来、日本の伝統的木造建築に合板が使われていたわけではありません。第二次世界大戦後の復興で住宅建設ラッシュが始まり、朝鮮戦争で急速な合板ブームが起こったとすれば、現在の住宅建築が、伝統的な木組み工法から、より合理的な在来工法に移行し、合板を多用するようになったこととリンクします。木質パネルや2×4(ツーバイフォー)工法のように合板で構成された家は、合板なしでは家を建てることができません。合板を使わずに、北海道で快適に住む家はできないの?どうやらそんなことはありません。床のフローリングが、いつからか無垢材から合板に変わってしまったように、下地にしても同じように合板に頼っているだけです。僕は今、合板ゼロの家を標準にしています。「疑わしいものは買わない、使わない」の法則で、住宅に合板は使わなくてても良いと思うからです。林や梁を表に出した日本人の心に響く美しい木組みの家は、無垢の木だけで立てたいと思います。
JAS規格による合板の種類(接着剤の種類と耐水性能で分類)
[特類合板]耐水性が高いフェノール樹脂接着剤の合板。構造用合板はこれ。
[1類合板]屋外での型枠や下地などに使う。コンパネと呼ばれている。
[2類合板]室内用の合板で耐水性はほどほど。内装家具用。
[3類合板]耐水性が低く、天然系接着剤を使ったものが含まれる。
住宅に使われる合板(用途別に分類)
[普通合板]一般に合板といえばこれ。シナやラワンなどが一般的で、厚みも豊富。薄い板の層を厚みに応じ、何枚も張り合わせたもの。
[構造用合板]2×4工法や木質パネル工法の普及により、構造上、必要な耐久壁や屋根・床の下地として使われる。フェノール系接着剤を使用していて、厚生労働省が定めるホルムアルデヒド放出基準値の50分の1レベルの製品もある。
[化粧合板]普通合板の表面に木の単板を張り合わせた天然木合板や、メラシン樹脂・ポリエステル樹脂で加工したり、木目を印刷したシートをプリントしたプリント合板などがあり、内装や家具・建具などに使われる。
[ランバーコア合板]集成材を芯材にして、両面に単板を張り合わせた合板。家具や棚板に使われる。接着剤の使用量は、意外に少ない。
[OSB合板]木片を接着剤で固め、乾燥プレスしたもので、主にフェノール樹脂が使われる。同比重の場合、他の合板より接着剤の使用量は多い。