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ビオプラスの家

(4)自然塗料の話

健康な住まいの塗料を考える

自然素材にこだわった家づくりをすると、無垢の木をたくさん使うことになります。当然、塗料を塗る面積が増えるわけですから、人体や環境に対してリスクの少ない塗料を選ぶ必要があります。僕たちの身の回りにある塗料は、健康に大きな影響を与える有害化学物質を多く含んでいるものがほとんどです。石油に含まれる樹脂と油脂を化学合成した化学系塗料ではなく、天然成分で構成された、より安全な塗料が求められています。

化学合成された塗料や接着剤に含まれるホルムアルデヒド、トルエン、キシレンをはじめとする化学物質は、シックハウスや化学物質過敏症をはじめとするさまざまな健康障害の原因となっています。天然系の木材用塗料は、空気中の酸素と結合し、固まる性質の植物油(乾性油)を主原料としています。乾性油だけをそのまま使ってもよいのですが、乾燥時間を早くし、表面保護の塗膜をつくるための乾燥剤や天然樹脂と、できるだけ人体や環境に対してリスクの少ない溶剤を配合したものが自然塗料です。

この油性の塗料はオイルフィニッシュで、誰にでも簡単に仕上げることができます。

自然塗料の選び方

一口に自然塗料といっても、使う場所や用途、含まれている成分などによって、使い分ける必要があります。主な、選び方のポイントを見てみましょう。

①防腐剤に注意する

外壁やウッドデッキを塗る場合など、外で使用する塗料には、防腐剤を添加している場合があります。このタイプの塗料の室内での使用は避けなければなりません。内・外で使い分けるか、防腐剤無添加で安全な室内外兼用の塗料を選びます。

②用途で選ぶ

室内で使用する木材用塗料には、大きく分けて2つのタイプがあります。いずれも、木の材質や用途に応じた使い分けをします。木の中に浸透して中から保護する浸透性塗料は、主に針葉樹と相性が良く、床や腰板、天井板などに適します。木の表面に膜を張り、表面を保護する塗膜性塗料は、どちらかといえば広葉樹との相性が良く、床や家具、建具などに適しています。

③溶剤成分を確かめる

自然塗料に使われている溶剤成分は、オレンジやレモンの柑橘精油か、無臭の石油系溶剤イソパラフィンを使用したものが主流になっています。天然の柑橘油は、それなりに揮発性が高いので、アレルギーや臭いに過敏な体質の人は、後者を選んだ方がいいでしょう。ミネラルオイルやホワイトスピリッツなど、その他の石油系溶剤を使用する塗料は、室内での使用に注意が必要です。

④収納部には注意を

自然塗料は、扉のついた収納棚などの密閉空間で使用すると、酸化が進み、カビの発生源になる場合があります。扉に通気口をつけるか、収納内部の使用は控えたほうがいいようです。無塗装のままでもよいと思いますが、どうしても塗りたい場合は、シェラックニスか天然の水性シーラー、植物油の入っていないミツロウワックスなどを選ぶとよいでしょう。

⑤水性塗料は安全か?

揮発性の有機溶剤を減らす目的で、水を溶剤とした水性塗料が開発されています。水が溶剤ならば安全と思いがちですが、実際には界面活性剤、泡沫抑制剤、濃縮剤、保存剤などが添加されています。さらに、グリコール類やアミンといった有機溶剤が、補助剤として含まれているのです。環境先進国ドイツの環境適合基準である「ブルーエンジェルマーク」が付いている塗料であっても、溶剤成分は最高10%まで認められています。安全性を誤解して無神経に取り扱い、直接手で触れたり排水溝から捨てたりすることは避けなければなりません。空気汚染から水汚染へ移行しただけになります。自然塗料メーカーからは、安全な天然成分でつくられている水性塗料が出ていて、こちらはおすすめです。

⑥メンテナンスも考える

日々のメンテナンスを考えると、最初に選ぶ建材の材質と塗料の選択がとても重要になってきます。シックスクールではワックスが問題の一つになっています。ビニールの床や化学合成塗料を塗装した無垢のフローリング床のメンテナンスには、化学ワックスしか使えないことになるからで、汚れや旧塗膜をはがす剥離剤の影響とあわせて、解決できない問題となっています。水性塗料と同じ理由で、水性タイプのワックスであっても安心できないのです。住宅に使われる合板系フローリングについても、同じことが言えます。最初に無垢の素材を選び、適切な自然塗装をすることにより、メンテナンスにおける人体と環境に対するリスクを最小限に抑えることができるのです。

自然塗料の主原料となる代表的な植物油

【荏胡麻油】シソ科の荏胡麻(エゴマ)から摂取した乾性油。最近のヘルシー志向で食用としても栽培されている。乾燥は早いが、赤色に焼け色が出る。多少、匂いに癖があるので注意。ミツロウとミックスしたナチュラルワクスが国内メーカー数社から販売されている。
【亜麻仁油】亜麻の種から摂取した最もポピュラーな乾性油。時間がたつと黄色に焼け色が出る。乾燥を早めるために、亜麻仁油を煮詰めて乾燥剤を加えたものがスタンド亜麻仁油。日本での栽培の発祥は北海道。札幌の「麻生」は亜麻発祥の地からきている。
【桐油】桐の木から採取する乾性油。やや濃厚な油で、乾燥はやや早い。耐水性が良く、他の乾性油に比べ焼け色が出にくい。外壁の木下見板に柿渋や墨汁を塗った上から塗布すると、耐水性が向上し、長持ちするといわれる。