1家づくりに参加する―セルフビルド
安全な建材選びが必要不可欠
住み手が、家づくりの計画から施工にまで、できるかぎりかかわることはとても大切です。ドイツのエコロジー団地では、外観は無塗装で木の板張り仕上げのシンプルな仕上げにし、室内は住み手が自由に造ることのできる「スケルトン・インフィル」の考え方を取り入れた建物を目にします。セルフビルドは、もともと施主が家づくりに参加することが十八番のドイツ人にうってつけで、自ら内装を手がけようとすれば、自分たちの健康にリスクのかからない安全な建材を使うことが、必要不可欠になります。
セルフビルド建てられたドイツの家。屋根や壁までも緑で覆われた住宅棟には広い前庭が備わっている
銀行融資の「筋肉担保」ードイツのエコロジー団地
ドイツのエコロジー団地では、住人自らが工事に参加するセルフビルドが取り入れられていて、なんとこの労働力が、銀行融資の「筋肉担保」として認められ、建設資金の一部になっているのには驚きました。そうした背景もあって、家を建てる人たちの多くが自ら建設工事に参加しているので、安全でエコロジカルな建材や塗料などを見分ける目も、自然と厳しくなっているのでしょう。ドイツでは10%、オーストリアでは50%以上の住宅が、住み手自身によって建てられていると言われます。家は「買う」ものではなく「造る」という考えです。このため、100人の家族には100通りの住まいの提案が必要になってきます。
家族や友人を集めて
僕たちの周りにも、セルフビルドを取り入れて施主施工に挑戦する人たちが、少しずつですが増えてきているように思えます。床のフローリングやウッドデッキを植物性の自然塗料で塗る人、仕上げの天然ワックスを塗る人。壁や天井の仕上げはビニール壁紙では満足できないので、珪藻土や漆喰塗りにチャレンジする人などが増えてきています。珪藻土や漆喰塗り壁は部屋の湿気を吸ったり吐いたりする吸放湿機能に優れているうえ、空気をきれいにして結露防止にも役立つことから、ここ数年で人気の仕上げ材となりました。やわらかな自然の色合いと素朴な質感は、精神的な安らぎも感じさせるおすすめの一品です 左官屋さん気分になり、自分の気に入ったパターンをラフに仕上げるなら、家族や友人を集めてトライするのがいいと思います。
プロのようにフラットに仕上げるのは無理でも、個性的なコテムラ仕上げならば、素人でも十分に施工することができます。今まで数十人の方々が、塗り壁の施主施工に挑戦するのを見てきましたが、中にはプロ顔まけのセンスを持った方々も少なくありません。
人件費削減にも反映
コストの話を少しだけしましょう。
一般的には、プレーンで無垢の自然素材を使うと、仕上げの作業費がかさむことになります。材料代もさることながら、手間のかかる人件費が大きくコストに反映します。
そこで、たとえば35坪の住宅で、施主が仕上げ工事をセルフビルドで行った場合どうなるでしょうか。床のフローリングの塗装で10万円、壁の珪藻土塗りで30万円、窓枠や建具の塗装でさらに10万円。これを自らセルフビルドすることで約50万円節約できるばかりか、メンテナンスのコツも覚え、多少の補修やアフターケアなどは自分でできてしまいます。呼吸性のある自然素材の組み合わせは、メンテナンスが面倒と思われがちですが、そんなことはありません。床のフローリングや窓枠、建具・家具に塗る自然塗料の植物オイルは同じものを使用すればいいし、無塗装のコルクやテラコッタタイルなどにも使える。普段のメンテナンスはミツロウワックスを定期的に塗るだけでいい。住み手が家づくりに参加するメリットと楽しみを確かめてみましょう。