WORKS
事例集

過敏体質のために対策を徹底した自然派住宅

札幌市 Nさん邸 / 夫婦、子ども1人
1階。奥の小上がりからダイニング・キッチン、及び手前の就寝スペースと、全体がつながった空間。ダイニング・キッチンと就寝スペースは無垢材造作のシェルフで緩やかに仕切った。壁は珪藻土塗り、天井は和紙貼り

家族3人のうち2人が化学物質過敏症で、特に臭いに反応して体調に影響を与えていた。
建て替え希望ということで、お話を伺いに私たちは当時ご家族が住んでいた家を訪問し、
ご自身の体調のことや現状の家の問題について具体的にお話を聞いた。
その中で「臭い」と一言でいっても多様であることが分かった。
例えばガスや灯油などの生活インフラの熱源、洗濯の柔軟剤や大気汚染、自動車の排気ガス。
たばこの煙や化粧品、整髪料など日常的に散在するものから、
本の製本の臭いや建材から発せられる臭いに至るまでさまざまなものが影響していることがわかった。
上記の臭いはそれぞれ強弱の差はあれ、お二人にとって体調悪化の共通した原因となっている。
そのため家づくりにおいても、それら臭いの元となるものを極力排除することが求められた。

自然派住宅だからといって、あるいは無垢のものだからといって、それが体に何の影響も与えないとは限らない。
自然素材でも当然臭いのあるものがある。特に木材は木の種類によってそれ特有の臭いを発する。
例えば床材として一般的に広く使用されているナラ材は、ウイスキーの醸造樽にもよく使われる。
それは液漏れしないという特性以外にナラの香りとタンニンが原酒に溶け込みまろやかな味に仕上げるためでもあり、
独特の香りを持つことがわかる。
臭いは人によっていい匂いにもなれば、嫌な臭いにもなりうる。

ビオプラス西條デザインの家づくりでは木造住宅の一番重要な構造材のみならず、床などの仕上げ材や建具、家具、
そのほか造作材もすべて無垢材、それも「道産材」を使用しているが、まずはその木材そのものの体への影響を確認する必要があった。
柱や梁など建物の骨格を形づくる構造材に使用するトドマツ材。
床材にはトドマツ材のほか前述したナラ材、及びクルミ材、イタヤカエデ材。
そのほかコルクタイルなど木材ではないものも含めて、サンプルをそれぞれビニールの袋に入れて臭いが混ざらないように渡して、
何日間かその影響を確認していただいた。

その結果を受けて、着工前にフローリングにはクルミを選択したのだが、工事が進みフローリングを張る前の段階で、
実際に使用するクルミのフローリングのサンプルから臭いが感じられたため、施主に相談し急きょ臭いが少ないイタヤカエデのサンプルを渡し、
影響の有無の確認をあらためてお願いした。
結果的にイタヤカエデに変更することになった。
木材はやはり実際に使用するものを確認していただくことが重要であることを認識した。

また他の木材についても、事前に十分時間をとって確認していただいた。
また開催中の他物件の見学会にも来ていただき、使われているトドマツやナラなども体験していただいた。
また主に天井に貼る和紙、あるいはワックスやクリアーの塗装についても同様に、すべてのサンプルを事前に確認いただいた。
ここまで徹底してもなお不安はある。
しかしやりすぎるということはないので、材料で体に悪い影響を与えそうなものは徹底的に排除しようと試みた。

外装材については板張りをよく採用しているが、今回はガルバリウム鋼板の、それも塗装品ではない素板の角波サイディングを採用した。
外観はシルバーで硬い印象をもつが、これも理由があっての選択である。
将来的に塗装の塗り替えなどのメンテナンスが必要のないもの、すなわち、もともと塗装品ではないものや塗装を施していないもの。
これは、将来塗装したときに発する臭いを避けるための選択である。
このようにして、施主と徹底的に事前に打ち合わせと確認をして、互いに納得して工事に臨んだ。
そして先ほども触れたように工事中でも臨機応変に対処してベストの方法を探っていった。

その一方で、住宅のプランニングそのものについて、例えばガスコンロを使用しない、あるいは灯油を熱源としないなど基本的なことはもちろん、外部から室内への空気の流入を避けるための窓の配置、換気のシステムなど空気の流れを慎重に検証した。
換気は1階と2階それぞれ単独で熱交換式の24時間換気システムを採用。
プラズマ清浄機をつけると効果的かと思い提案したところ、以前に体に影響があったということから採用しなかった。
こちらが良いと思ったことは必ずしもいいわけではないこともあらためて認識した。

窓についても、周囲の建物との関係から直接入る日射により悪い影響を受けていることが実感としてあったため、
すべて日射遮蔽型のトリプルガラス仕様を選択した。
室内の壁は、珪藻土塗り壁で仕上げた。調湿性に優れ、24時間換気システムとともに室内の湿度変化に対応してくれる。

施主の思いは切実で、当初住めればいいというような感覚であったが、プランニングや工事が進む中で、間取りや設備機器の選択だけでなく、
照明器具や建具の金物など選択することの苦労よりも楽しむという意識に変化していったように感じた。
家づくりは施主にとって大変であることは事実だが「新しいものを選ぶ」という楽しみも味わっていただきたいと考えている。
そのために私たちは施主の要望に耳を傾け、それが100%できるわけではないかもしれないが、できるように努めることを肝に銘じている。

工事が終わり、引き渡しをした後、家族がそろって入居できたことは大変良かったと思う。
その後の実生活の中で、また季節が移ろう中で起こりうるさまざまな問題と向き合いながら、対処方法を試行錯誤しながら生活されている。
家も生き物。呼吸し、暖房の時期には乾燥し、それまで発生していなかった臭いが出ることもある。
完成して終わりではなく、むしろこれからがスタートと考え、私たちもできる限りのサポートを続けていく思いである。


Nさんより

化学物質過敏症の家族のため住環境を見直そうと考えていたときに、無添加・自然素材で家をつくっているビオプラス西條デザインを知り、モデルハウスの見学を申し込みました。
自然素材のリノベーションについて色々と教えていただき、無垢の木と天然素材の家への憧れが強くなる一方、予算という現実との葛藤は強くなっていきました。
その後、数年にわたり体調の変化に伴って、持ち家のリフォーム、建て替え、新しい土地を探しての新築、マンションのリノベーションなど、ベストな選択は何かを相談させていただきました。考えている間にも、暖房に灯油は使えなくなり、その後台所のガスも息苦しくなり、隣家の灯油ボイラーの排気で窓も開けられず…と、条件は厳しくなる一方でしたが、その度に今までの経験から解決の方法を提案してもらえて心強く、とても感謝しています。

結果として建て替えを決め、材料選びが始まるのですが、無垢の木・仕上げのオイルも事前にサンプルをいただき、テストをして体調が悪化しないようなものを選べました。完成後はしばらく換気の時間が必要と考えていたのですが、24時間換気システムと珪藻土の壁が効果を発揮してくれて、家族が揃って入居できたことは予想しなかった大きな喜びです。


外観。将来的に塗り替えの必要がないガルバリウム鋼板のサイディング。
ダイニング・キッチンの片側の壁一面に収納やクローゼット。
ミニキッチンも無垢材の造作。コンロは臭いのもととなるガスを避け、電気コンロを採用。
小上がり際にテーブルを置けば、小上がりが腰かけにちょうどよい高さになる。
3畳ほどの小上がり。1人分の就寝場所にも利用できる。
畳は臭いの強いイ草ではなく、特殊な紙製を使用。
1階の玄関。右側に2階へ通じる廊下と1階を隔てる気密性の高いドアがある。
玄関内の収納は下足用のみでなく、さまざまな道具の収納として充実している
2階のリビング空間。上にロフトがある吹き抜け空間。手前は3枚引き戸で仕切ることができる。1階床下から単独で換気ダクトを引き、24時間熱交換で換気。
壁は調湿・消臭機能に優れる珪藻土の壁。床はイタヤカエデ材とした。
ロフトの窓からも採光があり、明るい空間。
ガラスは化学物質過敏症対策のため日射遮蔽ガラスとした。
ロフトの床材の裏面と梁を現しにした天井。
キッチンはタカラスタンダード製のホーローキッチン。
コンロはガスを避け、IHとした。背面の棚はトドマツ材で造作。
ロフト空間。窓からの採光で柔らかな光に満たされる。
2階子ども部屋。2枚引きのクローゼット。
リビングと同じイタヤカエデ材の床、珪藻土の壁。
トドマツ材で造作した洗面化粧台。
壁面にはふんわり温かい温水式パネルヒーターを設置。
トイレも壁に珪藻土、床にイタヤカエデ材を使用。