札幌市豊平区月寒に建つ木造3階建ての施設。近隣には学校や住宅、商業施設やマンションなどが建ち並ぶ。この地に以前からあった木造2階建ての「生活クラブ・ケアプランセンター」の建て替え事業である。主な機能は、ケアプランの作成や各種介護サービスを利用する際の相談や手続き業務。3階にその事務所があり、2階には多目的スペースと大小2つの会議用スペース「スペース ぽんこたん」が占める。
建て替えに際して、生活クラブの食材でヘルシーなランチメニューを提供するカフェとして「かふぇ ぽんこたん」を新たに1階に併設した。そして施設全体の名称を「生活クラブ館とよひら」とし、生活クラブが共同購入するこだわりの安心・安全な食品と同じように、建物も北海道産の無垢の木と無添加にこだわった自然派建築として、さらにSDGsへの取り組みにつながっていくことを目的とした。
用途の性格上、カフェも含め全館バリアフリー仕様に。アプローチには江別レンガタイル仕上げのスロープを設けて、トイレも車いす対応の仕様とスペースを確保し、車いす利用者のためのエレベーターも設置。内装仕上げは道産材を基本とした自然素材で、断熱・気密など性能面は当社標準仕様とした。
外観も道産材を意識したファサードとして、道路側の下層部分は札幌軟石張り、上層は道南杉の横張りとした。また1階「かふぇ ぽんこたん」の道路に面した窓には木製サッシを採用している。内部仕上げにも自然素材を使用するとともに、構造の柱や梁を現しとした。特に1階カフェ内では、大きな梁を受ける中央の大黒柱が存在感を示し、これを囲うように無垢の耳付き一枚板のテーブルが置かれている。
1階店舗の床はトドマツの厚板材張り、壁はホタテ漆喰塗り仕上げ、天井は木毛セメント板の塗装仕上げ、及び和紙貼り、窓には幅広の枠を施した。また建具と固定の家具、テーブルやチェアなどの家具もすべてトドマツの無垢材の造作。レトロ調の照明器具や、壁面に埋め込まれたワインボトルのガラスの装飾が、カフェらしい雰囲気を演出している。
共用の廊下は耐摩耗性と防滑性を考慮し、各階とも亜麻仁油が主原料のリノリウムのシート貼りとした。2階大小の「スペース ぽんこたん」においては、床にナラ材を用い、壁はホタテ漆喰塗りと板張りの腰壁、1階と同様に木毛セメント板の塗装と和紙貼りとなっている。3階には「ケアプランセンター」の事務室のほか休憩室や倉庫などがあり、事務空間の仕上げは天井の木毛セメント板と板張りの腰壁以外は2階と同様である。
断熱材には、セルローズファイバーを使用。冷暖房は天井埋込みによる空冷ヒートポンプ式の空調機、換気は集中換気扇による第三種換気を採用している。視界が開けている道路側が北側で、敷地に余裕がないケースだったことから、居室の採光の確保には最も気を使った。
道路側は全面駐車スペースとしたことから建物全体を南側へ寄せた。南側の隣地には本施設と関連する施設があり、それが幸い低層の建物でもあったため、南からの採光を確保することができた。ただし消防法上の基準をクリアするために、窓を含めた開口のサイズや高さには細かい配慮を施した。
全体として総3階建ての矩形のデザインであるため、外観は無垢の仕上げ材の存在感でファサードに変化を、内部は構造材を表しとすることで、ダイナミックな空間を演出するよう心がけた。