南に面した前庭の樹木と響き合うように、道産カラマツの外壁があたたかみのある雰囲気を醸し出す。一見すると新築そのものであるが、元はといえば、昭和50年代に建てられたコンクリートパネルによる住宅だ。外観をはじめ、内装のフルリノベーションにより生まれ変わった住まいは木の香りにあふれ、なんとも心地よい。空気まできれいに感じられる。
オーナーはご夫婦と小学生の3人家族。ビオプラス西條デザインとの出会いは、知人が同社で建てた住まいを見たのがきっかけだ。「木をたっぷり使った家に住みたかった」という奥さまは、有害な合成洗剤や食品添加物の問題など環境や健康への関心が高く、北海道の無垢の木と自然素材にこだわった自然派建築を専門に手がける同社ともすぐに意気投合。当初は新築を考えていたが、予算内に収めるために西條社長のアドバイスも得てリノベーションに舵を切ったのだった。
コンクリートの躯体は生かしつつ、外断熱とトリプルサッシを施工することで断熱性と気密性が格段に向上。北側にひっそりとあった玄関とキッチンは南側に移動させ、明るく暮らしやすい間取りに。床や建具、造作家具には道産材をふんだんに使い、木の温もりが感じられる空間に再生した。とくに、無垢のミズナラで仕上げた床は素足にも気持ちよく、息子さんも「肌ざわりがいい!」と大よろこびだ。念願の薪ストーブも導入し、冬が楽しみになった奥さま。「森の循環を考えたら、薪の利用はいいことですね。3.11以降は電気だけに頼らない生活をと思っていたのでうれしいです」。
住まいづくりのメインといってもいいほどに、今回のリノベーションでもっともこだわったのが、キッチンだ。もともとお料理が好きな奥さまはパンをこねたり、時間があればお菓子も焼いたりする手づくり派。そんな時間をひときわ楽しくするのはワークトップにステンレスを採用したアイランドカウンターと、引き出し収納を充実させたワイドなキャビネット。北海道のトドマツが気持ちを和ませるビオプラス西條デザインオリジナルの木製キッチンである。外気の導入で低温に保つ食品庫も完備され、家庭菜園で育てた野菜や常備食のストックにも大活躍。キッチンからダイニングテーブルも近く、「子どもの勉強も見てあげられるし、料理もすぐ出せる。家事動線がラクになりました」と奥さま。キッチンからはリビングを通らずに2階やユーティリティ、玄関へ抜けることができ、それぞれの空間が行き止まりのない回遊式になっているのも便利である。
壁の塗装や床の自然塗料仕上げなど、施主自らが参加して自然素材にふれ、わが家の完成にひと役買うのも忘れられない思い出となる。フルリノベーションのメリットは、なんといってもコストを抑えながら性能もデザインも新築に劣らないクオリティを実現できること。浮いた予算でキッチンをグレードアップしたり、好きな素材を取り入れたりすることで新築以上に自分にフィットする住まいづくりも可能となる。もとは店舗のインテリアデザインを手がけていたという同社は、内装を刷新し空間に新しい価値を生み出すのは得意なところ。今後ますます需要が伸びそうなリノベーションから目が離せない。
住まいの提案、北海道。vol.58掲載