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5住まいの寿命と価値の考え方

5 住まいの寿命と価値の考え方 時代に流されず、長く住み続けられる家

ドイツでは、手入れが行き届いてしっかり管理された住宅は、20年以上経過しても不動産価値があると聞きました。そのため、ある程度、初期投資が高くなっても、エコロジカルな住まいづくりにコストを割くことができるようです。また、歴史的建築物に価値があるのは、ただ古いというだけではありません。当時の文化を反映していることはもちろんですが、使っている材質や工法が本物だからです。では、現在、建てられている住宅の中で、どれだけの家が本物といえるでしょうか?見た目の綺麗さや利便性にとらわれたビニールや合成製品で建てた家に、価値が認められるとは思えないのです。

日本では、現在建てられている住宅のほとんどが、50年以上の耐久性があると言われているにもかかわらず、中古住宅の不動産価値が見直されていません。このことは、住まいの寿命を延ばすためにも、これからの大きな課題だと思うのです。

本来、日本の家は木の家。伝統的木造建築の木組みの美しさは、時代とともに変化しながらも、有機的価値を保っています。美しい木の顔がちゃんと見える家をつくることは、20〜30年経った後にも、住まいへの愛着とともに、本物の木の家としての存在価値を残すことになるのではないでしょうか。それは無機質のコンクリートやビニール、合成製品の新建材ではありえないことで、自然の風合いを感じられる素材だけがなせるわざです。

今や、古民家の古い柱や梁、床板、建具などが、高価で取り引きされる時代。本物の価値を見いだせる住まいをつくるには、ボリュームのある無垢の木の構造材でなければ、古材としての価値はないでしょう。建具や家具も同じように、ビニールや合板でできているものには、アンティークとしての価値はありません。内装材もビニールクロスやビニールフロアーよりは、自然素材でできた家に分があります。

逆に考えると、骨太の木組みを大胆に表に出し、ビニールや合板に頼らず、無垢の木と自然素材で建てた住まいは、今後の中古住宅市場においても、ビンテージとして十分な価値を満たすことができるのではないでしょうか。そんな家ならば、仮に30年後に、住み替えなどのため家を手放さなければならなくなった時にも、新たな住み手が壊すのが惜しいと思えるような、価値のある住まいになると思うのです。これこそが、僕が目指す家の姿でもあります。時代に流されず、長く住み続けられる家。本当の価値のある家を残したいと思うのです。

ドイツ・ウルムの街並み。
赤い屋根(写真上)と白壁の建物(同下2枚)が美しい景観を作り上げている。街では朝市が開かれ、旧市街の古い建物も大切に維持されている