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ビオプラスの家

(7)断熱材の話

将来まで考えた断熱材を選ぶ

断熱材は住宅を構成する素材の中で、構造材とともに大きな容積を占めます。しかし、目に見えない部位であるために、価格が安く性能が良ければ何でもよいと思われているのではないでしょうか。アスベストのように、数十年経ってから人の健康に大変な負担を与え、撤去しようにも一歩間違うと環境汚染にもつながるようなことがあってはなりません。将来的にも、大きな社会問題にまで発展することのない、安全な断熱材の選択が不可欠なのです。

エコスタイルな家づくりで断熱材を選ぶならば、製造から廃棄までにかかるエネルギーコストや環境負荷を少なくし、施工者や居住者の健康に負荷をかけないような断熱材を選ぶべきです。できることならば、断熱材は、地域の材料でつくるスローな天然系の素材の中から選びたいと思います。木の樹皮や繊維を原料にしたもの、古紙を再生したセルロースファイバー繊維などの断熱材は、どれも自然素材が原料で、湿気を吸ったり吐いたりする呼吸性があるのが特徴です。家全体が呼吸する理想の住まいを実現するとともに、住む人の健康を重視し持続可能な住まいを求める自然派住宅にとって、自然素材の断熱材はなくてはならない素材なのです。

まして、北海道の住宅に断熱材は欠かせません。寒い冬の冷気を遮断するためには、たくさんの断熱材を必要とします。環境に負荷をかけず、エネルギー消費を抑えるためにも、家一軒あたりの断熱材のボリュームは、今後さらに増加することになるでしょう。住まいの構造によって、さまざまな工法があるようですが、断熱材は、壁の中に入っていて見ることのないものですから、住人にとってはあまり関心のない素材かもしれません。ドイツなど環境先進国でのエコ建材の展示場では、地球環境や人体への負荷が少ないいろいろな断熱材を見ることができます。

セルロースファイバー断熱材。
新聞古紙を粉砕機にかけるので、製造時のエネルギー消費と二酸化炭素放出量は他の断熱材に比べ少ない

一般的な断熱材

現在、広く普及している断熱材は、その素材によって分類されています。例えば、以下の3つのように分類できます。

①無機質繊維系断熱材

価格が安く、一番多く使われているグラスウールやロックウールなど、鉱物繊維の断熱材は、廃ガラスや製鉄スラッグなどの廃棄物をリサイクルしているもので、不燃材料です。発ガン性や、繊維を固める接着剤と廃棄の問題に注意が必要です。

①無機質繊維系断熱材

②発泡プラスチック系断熱材

鉄筋コンクリートの建物に使われている断熱材ですが、木造住宅にも使われます。ウレタン系、ポリスチレン系、ポリエチレン系、フェノール系など、たくさん種類がありますが、石油を原料としており、製造時のエネルギー消費も高くなります。発泡させるため、フロン・代替フロンによる環境への問題、火災による燃焼ガスの問題に注意が必要です。

③リサイクルペット繊維

フリースでお馴染みのペットボトルを再生したポリエステル繊維の断熱材で、弾力性があり、ヘタリに強いため、長期間断熱性を維持できます。無臭で、接着剤、フロン、スチレンガスなど有害物質の心配もありませんし、燃えても有害ガスを出さないので、安心して使用できます。ハードボード状、ソフトマット状に加え、新たに吹き込みブローイング用チップも加わり、さまざまな工法に対応できます。原料は石油ですが、ペットボトルの再利用の可能性を考えると、エコ断熱材の仲間に入れてもよいでしょう。

天然素材のエコ断熱材

ここ数年の健康志向で、海外からもさまざまな天然素材の断熱材が輸入されています。何よりの特徴は自然素材の良さで、呼吸性があり、湿気を吸ったり放出したりする性質があります。それぞれの特徴は、以下の通りです。

①木質繊維系断熱材

廃木材の繊維をボード状に成形したインシュレーションボードや、古紙を原料に綿状に粉砕したセルロースファイバーは、以前からも使われている天然系断熱材の仲間です。ただし、繊維を固める接着剤には注意が必要です。最近では、樹皮や木材チップを原料にして、木質繊維を固めたボード状の断熱材が、国内で製造されるようになりました。地域の間伐材などを活用できるメリットがあります。このボード状断熱材は、壁の外側に断熱材を増し張りする際など、負荷の少ない断熱材として期待できます。

①木質繊維系断熱材

②ウール断熱材

おのずと知れた羊毛の断熱材。ニュージーランドやオーストラリアから輸入されています。バージンウール100%でできているものから、弾力性を持たせるためポリエステル繊維を混ぜたもの、衣服を再利用したリサイクルウールもあります。柔らかくて扱いやすい断熱材です。

②ウール断熱材

③セルロースファイバー断熱材

古紙を粉砕したファイバー繊維を、専用の吹込機でブローイングします。天然素材の断熱材では最もリーズナブルで、地域の古紙を再生した材料を使えば、よりエコロジカル。湿気を吸ったり吐いたりする吸放出性能に優れた、呼吸する天然系断熱材として、日本でも古くから使われていました。

③セルロースファイバー断熱材

④炭化コルク断熱材

コルクを蒸気で圧縮したボード状の断熱材で、水に強く、腐りにくいため、基礎や土間の断熱材として、また、防音・防振材としても使用できます。エコな断熱材として畳にサンドイッチしたり、床暖房用パネルの芯材にも利用されています。

④炭化コルク断熱材

リフォームでこそ使いたいエコ断熱材

短期間での改装や住みながらのリフォームとなると、健康への負荷を第一に考える必要があります。古い天井や壁を撤去した時に発生する断熱材の破片や粉塵が、他の部屋に行かないように、また、現場で作業する人の安全も考えなければなりません。エコ断熱材は、作業者にも住人にも安全で、安心して使用できます。くるまってそのまま眠ってしまいたいくらい気持ちの良い素材がそろっているので、リフォームやセルフビルドで家を建てるユーザーには、特におすすめです。もちろん、一般新築住宅にもぜひ使用したいですね エコ住宅を目指すなら、手を抜かずに、環境と健康に負荷をかけないエコ断熱材を選ぶことを忘れずに、気持ちの良い家づくりを始めましょう。

左:珪藻土系の塗り壁材。北海道産の珪藻土や火山灰を合わせてつくるやわらかな質感が特徴
右:漆喰系の塗り壁材。北海道産のホタテ貝灰と石灰を合わせてつくるシャープな質感が特徴