BIO + STYLE
ビオプラスの家

1バイオマスエネルギーのある住まい

「木の家」と環境保全

2010年版EDMCエネルギー・経済統計要覧によると、温暖化の原因とされる世界の二酸化炭素(CO₂)の排出量は年間288億トン。そのうちの75%は化石燃料の消費、25%は森林の減少が原因といわれています。森林は水と大気中のCO₂を吸収し、光合成によって酸素を放出します。光合成で吸収したCO₂から、呼吸で放出したCO₂を差し引いた分が、実質の吸収量となります。日本の森林では約11億トンの炭素が蓄積されているらしいです。

あまり知られていないことですが、森林の土壌中にも膨大な炭素が貯蔵されていて、日本の森林の深さ1mまでの土壌に約54億トンの炭素が貯留されている、との専門家による試算もあります。森林は地球環境を保全する重要な役割を担っています。木をたくさん使い「木の家」に住むことは、結果的に森林を守り、さらに持続可能な再生資源として地球環境を保全することにつながります。

囲炉裏とペレットストーブがある広い土間玄関は、みんなの遊び場

「カーボンニュートラル」という考え

地球温暖化の最大の原因とされる二酸化炭素(CO₂)の削減は環境問題の最大のテーマです。

持続可能な木質バイオマス(生物)資源であっても、燃焼させると、化石燃料と同じようにCO₂を発生させています。しかし植物は、成長過程で光合成によりCO₂を吸収しているため、燃料として使用しても蓄えたCO₂を消費しているだけであり、ライフサイクル上はCO₂排出量が相殺され、環境破壊にはつながらないとされています。

このようなCO₂の増加につながらない性質や、事業所などが発生するCO₂排出量を、社会活動などによる植林や、自然エネルギーを積極的に取り入れることによって、プラスマイナスに近づける取り組みを「カーボンニュートラル」と呼んでいます。一般家庭でも、ボランティア活動や寄付などを通じて植林事業を応援するなど、CO₂削減に積極的にかかわっていくことが大切ではないでしょうか。

暖房エネルギーとして化石燃料を大量に消費している北海道でこそ、地域の木質バイオマス燃料を利用した住まいの暖房システムを考えていきたいと思います。

木と炎のある暮らしーまきストーブの話

灯油価格の急騰からか、まきストーブの人気が急上昇しているようです。寒い北海道の冬の夜、ゆらゆらと揺れる炎を眺めながら過ごすのもいいものです。燃料にするまきは、後述する木質ペレットと同じバイオマス燃料で、木の家と同じように、カーボンニュートラルの概念が適用される、CO₂を放出しない環境にやさしい暖房エネルギーになります。

注意しなければいけないのは、ストーブで燃やす材料を選別することです。木なら何でもいいわけではありません。古材や残材を燃やす場合には、防腐剤を塗った材料や接着剤を使った合板類、化学系塗料を塗った材料を燃やしてはいけません。何かの間違いで、室内や環境に有毒ガスを撒き散らすことになりかねないからです。焚きつけ用に使う紙のカラーインクから有害物質がたくさん出てくるのではないか、とか、接着剤で固めた合板や得体の知れない塗装がされた板などは怖くて燃やす気になれない、といった不安もあると思います。

僕は、本来の正しい木の使い方というものが、あると思います。自宅にまきストーブがあると、合成化学物質を使った木材を燃やすことはとても危険なことだ、と実感することができます。住まいづくりでは、こうした観点から、汚染木材を減らすことにつなげていくことも大切なのです。

木質バイオマス燃料ーペレットストーブの話

古くからあるまきストーブと同様、近年、バイオマス燃料の木質ペレットを使ったペレットストーブが注目を集めています。木質ペレットとは、木の樹皮や間伐材などを粉砕して作った木質バイオマス燃料のことです。粉砕した木粉に、瞬間的に240℃の高温を加えることによって、木の成分・リグニンが固まる性質を利用し、直径6㎜×長さ15㎜ほどのペレットに成型します。木質ペレットは、燃焼効率が高く、有害なガスを出さず、わずかに残った灰は肥料になります。

ペレット燃料は、ここ数年間に突然、出てきたものではありません。第二次オイルショック後の1980年代の初め、枯渇資源を使わない石油代替エネルギーとして注目されました。当時、日本では、木材加工のために剝ぎ取られた後、処分に困った樹皮を原料にして、岩手県の葛巻林業が試行錯誤の末に実用化にこぎつけたのが始まりです。この会社が作っていたのは樹皮ペレットですが、一般的には樹幹原料のホワイトペレットや混合ペレットなどが作られていました。また、最近では、資源豊富な野生の熊笹や穀物を原料にしたペレットの研究も行われているようです。

僕自身が初めて、ペレットストーブやボイラーを見たのは、1999年春、ドイツ・ウルム市で開かれた「エコ・バウメッセ」の会場でした。数年後、ドイツやオーストリアのエコハウスを見学した際、主熱源にペレットを利用しているものを多く目にし、一般家庭での普及も近いのでは……、と感じたものです。

エコメッセでのペレットストーブ
オガタン燃料
ホワイトペレット燃料

そのころ日本では、海外からの輸入ストーブに頼っていましたが、遅ればせながらここ数年の間に自動燃焼式の国産ストーブが開発され、購入後のメンテナンスの面でも安心できるようになりました。近年の原油高騰の影響もあり、今後もさらに脚光を浴びていくことでしょう。

今後期待したいことは、給湯用のコンパクトな国産ボイラーの開発ですが、なんといってもペレット燃料の最大のネックは、燃料のデリバリーとストックにあります。暖房として、1時間当たり1㎏消費される燃料を1年分ストックするとなると、かなりのスペースを要することになります。湿気に弱いので、雨ざらしで保管、というわけには行きません。道内では、小口でペレットを宅配する仕組みができているようです。地域の木質資源を利用したバイオマス燃料と同時に、それらを生かす住まいの建築計画が大切です。

今年のわが家ではまきストーブが大活躍。でも、皆とちょっと違っているのは、まきではなくオガタン燃料を燃やしていたことです。オガタンとは、僕が無垢のフローリングをつくってもらっている道南の工場が、加工の際に出るおがくずを固めて高温で熱して作った「高圧薪」のことです。このまきは、ペレット燃料を大きくしたような品物で、よく乾燥していて比重も重いので、煙を出さずに燃焼し長持ちします。僕が仕事で使うことによって出したフローリングのおがくずを、少しでも自分で消費したい気持ちなのです。

カーボンニュートラルの原則からも環境に優しいエネルギー源として注目のペレット。近年、道内でも新しい製造工場が開業されています。しかし注意しなければならないのは、30年ほど前には全国に30カ所近くまで稼働していたペレット工場のほとんどが廃業し、その20年後には1工場しか残っていなかった事実です。一時の流行や目先の利益にとらわれることなく、計画性のもとに持続されていくことが大切です。そのためには、僕たちも積極的にペレット燃料を利用する必要があると思います。

シンプルなハロゲンタイプの室内照明が、良い雰囲気を演出する