BIO + STYLE
ビオプラスの家

3音と温もりを守る住まい

気持ちの良い快適な音とは?

僕は、都会の大きな公園の前に住んでいますが、絶え間なく往来する車の音で悩まされます。特に冬は、排雪の大型トラックや除雪車の大きな振動が追い討ちをかけ、不快な朝を迎える日が続きます。窓から見える緑と引き換えに、とんだお荷物を抱えてしまったようです。しかし、春になると小鳥がさえずりはじめ、近くの電線に止まって鳴くカッコウに起こされた朝は、清々しい気分で一日を迎えられます。

休日、山に入ると沢から聞こえてくる川のせせらぎや小鳥のさえずり、虫の音、風の流れが創り出すハーモニーは、この世で最高の調和音を感じさせます。ナチュラルな音は、人の心を癒やす効果があることを誰もが実感できるはずです。

反対に、人工的な騒音や振動はストレスとなり、人の健康を侵す深刻な問題です。屋外からの影響ばかりか、家の中の電気製品からも発せられ、さまざまな健康障害をもたらします。音には空気を伝わる音「音響」と床や壁を伝わる音「伝達音」があります。物を床に落としたり叩いたりすると出る「衝撃音」、ボイラーや冷蔵庫・洗濯機などから出る「振動音」は、コンクリートのマンションなどでは階下ばかりか離れた場所にまで聞こえてきます。適切に計画された遮音と防振対策は騒音によるストレスを軽減し、快適な生活を送るうえで、より大切になってきました。

防音対策は慎重に

僕の息子は、果物アレルギーと花粉症で悩まされていますが、中学生のころ、学校の音楽室へ行くと気分が悪くなると話していたことがあります。音楽室の壁や天井には防音効果のある建材が求められ、音を吸収するために、表面にたくさん穴のあいた有孔吸音板など吸音効果の高い建材が使われます。合板系の建材から放出される化学物質は、表面よりも切り口面からの放出量が多いため、表面に小さな穴がたくさん空いていると放出量は数倍に跳ね上がります。また、吸音材が室内の化学物質をいったん大量に吸収してしまい、再放出することも考えられます。防音のための厚いカーテンなども適度なクリーニングが必要になるでしょう。プライベートな音楽環境をつくるなら、健康的リスクのない自然素材を使いたい。無垢のやわらかな木や多孔質の珪藻土の塗り壁は音を吸収する効果があり、健康負荷のないナチュラル空間を創り出します。

マンションの防音対策

マンションの遮音は厄介です。コンクリートの壁や床は厚さが増すほど「音響」を防ぐ効果はありますが、「振動」を防ぐことはできません。さらにエレベーターやパイプシャフトは、衝撃音を広く伝えてしまうのです。手っ取り早く部屋に遮音効果をもたらすならば、厚いカーテンを窓にかけ、カーペットを床に敷き、壁にも織物のタペストリーをかけるなど吸音効果のある素材で部屋を覆うことです。最近は遮音効果のあるフローリングが人気のようですが、カーペットの床は音を50%吸収するのに対し、石や木の床は5%しか吸収することができません。このため、遮音フローリングは、薄くスライスした木を接着した合板の裏に、遮音シートを貼り合わせて作られています。これを接着剤で貼って施工するので、放出される化学物質には気をつけなければなりません。さらに遮音効果が高くなるほど不快なクッション感がありバランス感覚を損なうため、精神的ストレスの負荷が心配です。必ず施工場所を確かめてから使用しましょう。

最近、僕たちは、マンションの床には接着剤を使用せずに施工できる、はめ込み方式の遮音クイックフロアーを使うようにしています。天然ワックスで仕上げた柔らかな質感のコルク素材のフロアは、適度なクッション性がありおすすめです。コルク素材にはさまざまな遮音シートや防振材もあります。

屋外からの騒音対策

外からの騒音を抑えたいならば、高断熱化した住宅が良いお手本です。壁を厚くし、断熱材のボリュームも増す。窓は2重から3重へ、内側の下地石膏ボードも2重にし、当然仕上げ材も吸音性のある素材とする。外壁仕上げも音を吸収する柔らかな杉板の下見張りなどはいかがでしょう。さらに外壁面や屋根を緑化し、これに垣根や植栽を添えると、もう完璧です。

ドイツに見られるこのようなスタイルの住まいはすべて、エコロジー建築によって建てられたものであり、人の健康と環境に配慮した結果としての姿なのです。