【事例集】積丹町「のんのんふぁーむ」 ―夢の自給自足を実現する
2008年
昨年から、積丹岳の麓で有機農業を始めた阿部さんご夫妻。実は、僕たちが主宰するNPO組織・エコビレッジ実行委員会の「エコロジー住宅学校」を、2001年の開校時から熱心に受講していた卒業生なのです。
受講当時から、いずれはどこか理想の土地を見つけて、自給自足的暮らしを実現しよう、と企んでいたようです。ニワトリの平飼い農家や有機農法を実践する農家で勉強をしながら、理想の土地として選んだのが積丹の大平原。環境にリスクの少ないナチュラルハウスを、できるかぎりセルフビルドで建設しながら、畑を起こし、作物を育てるといった、とてつもなくハードな一年が始まりました。無農薬・無化学肥料で野菜を育てるのと同じように、住まいにも、合成化学物質を持ち込まないように、できるかぎり自然素材で家を建てました。
そんなご夫婦が、完成した住まいと有機農園に名づけた名前が「のんのんふぁーむ」。ご主人の愛称からとったホットな名です。
「のんのんふぁーむ」のナチュラルハウスには、阿部さん夫妻の自慢がいくつもあります。
厳選された自然素材はもちろんのこと、ご主人の一押しは、バクテリアの力で汚水を浄化したうえで、最後は畑の液体肥料にしてしまうという「BMW」という浄化システムです。嫌気性のバクテリアで一次処理された汚水は、屋外に手作りされた好気性のバクテリアとエアレーションの入った大バケツを3つくぐった後、浄化池に流され、水生植物で最終処理されます。ヨーロッパで見た「リビングマシーン」と呼ばれる浄化システムのミニ版といったところでしょうか。
もうひとつの自慢は、収穫した野菜を貯蔵する丘室。鉄筋コンクリート外断熱の部屋を、土で覆ってさらに断熱し、寒さから野菜を守ります。春になって温度が上がってきたら、今度は室の中に雪を入れて温度を下げる、といったゼロエネルギーの貯蔵庫なのです。母屋の暖房とお風呂の湯沸かしは、まき燃料のストーブ。電気を使わない自然換気を装備し、アナログチックな自然派スタイルのライフスタイルにぴったりの住まいなのでした。