北海道新聞連載記事です。
北海道新聞 平成22年9月23日生活面掲載
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「農を楽しむ」-西條さんの菜園便り ⑪「ネバネバ作物」
僕たちの有機農園では、収穫もずいぶん進み、気の早い菜園仲間は、既に畑の片付けを始めています。残暑もようやく収まり、本来の秋らしい気候が戻ってきました。
そんな中、この夏の高温続きで恩恵を受けた作物があります。昨年まで、ビニールのマルチやトンネルをかけずに、露地栽培を続けてきたオクラです。昨年は暖かくなってきた6月の中ほどに、2品種の種をじかまきして栽培していましたが、気温が低いせいか、背丈が低く、多くは収穫できませんでした。
そこで今年は、5月から自宅で育てた苗を移植。気温が上がるまでは、不織布のトンネルを掛けての栽培に変えてみました。プラスチック繊維を畑で使うことに抵抗があったのですが、上手に使うと何度も使えることがわかり、ちょっと妥協してしまいました。また、植え床も昨年までとは違っています。
僕は、一昨年から、肥料に牛ふんや鶏ふんなどの動物性の肥料を使わず、米ぬかや油かすなど植物性の肥料だけを少量使った野菜作りをしていました。有機質の肥料の中でも、使われている原料が単純なので安心感があったからなのですが、今年はここの苗床だけ、鶏ふんを使ってみました。3本の植え床のうち、2本をオクラ専用にし、残りの1本はモロヘイヤです。
トンネルと高い気温のおかげか、今年のオクラの生育はとても良く、今までで最高の収穫を毎日楽しめました。僕が栽培しているのは、一般的な五画オクラと丸い島オクラ、色鮮やかなムラサキオクラの3種です。何と言っても、オクラの花はとてもかれんです。南国っぽい雰囲気も良いですね。また、モロヘイヤは夏でも虫も付かずによく育ち、葉先を摘むと新芽が次々伸びるので、週に2度ほどの間隔で収穫していました。どちらの野菜も、ゆでるとネバネバ感がたまらない健康野菜。納豆と交ぜると絶妙のネバネバ食感を発揮します。
ただ、鶏ふんの影響か、他の作物と比べてみると葉の虫食いが多かったのです。有機質肥料でも、未完熟なものや、使用量を誤ると虫害が多くなるのはこういうことなのか、と実感しました。また、コンパニオンプランツとして混植する植物の見当が付かなかったので、ここは困ったときの万能植物「マリーゴールド」を、それぞれ植えつけてみました。オクラもモロヘイヤも背丈が高く収穫は高い位置ですむので、マリーゴールドは収穫の邪魔にならず、結果オーライです。野菜とハーブの混植では、成長丈や成育域の関係も大切なのだと、また実感しました。
実際に経験すること、感じること、成功、失敗、すべてが菜園生活の楽しみです。
(西條正幸・ビオプラス西條デザイン代表)
よく育ったモロヘイヤを収穫。左後方はマリーゴールドと混植したオクラ
とても美しくかれんなオクラの花
2010年09月28日
北海道新聞連載⑪
2010年09月09日
北海道新聞連載⑩
北海道新聞連載記事です。
北海道新聞 平成22年9月9日生活面掲載
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「農を楽しむ」-西條さんの菜園便り ⑩「虫から野菜守る」
気がつけばもう秋です、今シーズンの畑仕事も終盤にさしかかってきました。
僕の畑では、例年はお盆を過ぎて涼しくなると、夏バテ気味の野菜たちが元気を取り戻すはずなのに、今年は元気がありません。今までにない暑さと湿度の影響なのでしょうか、畑の環境も変わったような気がします。特に困ったのは、早朝の収穫時に、執拗に蚊の襲来を受けたことでした。
そんな時、僕が使っているのは、手作りの虫よけハーブスプレーです。釣りやアウトドアに20年来使い続けているのですが、無添加で安心、効果も抜群でおすすめです。作り方はとても簡単で、植物性のエチルアルコール1に対して清水2くらいの割合で溶液を作り、好みのハーブの精油を加えるだけです。精油の量は適当なのですが、スプレーして肌で香りを感じるくらいが目安でしょうか。
僕のお気に入りはハッカ、ラベンダー、モミなどを加えたオリジナルブレンド。市販の小さなスプレー容器に入れて畑の道具箱に入れておきます。野菜に農薬をかけないのですから、体にも化学薬品をかけたくありません。
畑の虫といえば、僕たちの有機農園では、イネ科のソルゴーやエンバク、マメ科のヘアリーベッチ、キク科のヒマワリなど虫のすみかになる植物を、畑の境に植えています。「バンカープランツ」(天敵温存植物)といわれ、野菜を守るための植物で、意図的に昆虫たちが集まってくるような仕組みをつくります。害虫を食べてくれる益虫たちが多いせいなのでしょうか、僕の畑では、アブラムシの姿をめったに見ることがありません。逆にアブラムシを食べてくれるテントウムシを見かけると、なんだかうれしくなります。
これらの背の高い植物は、障壁として、近所の畑から飛んでくる農薬を防ぐ「ガードプランツ」(障壁植物)としても役立つことで知られています。また、僕たちの有機農園がある札幌市東区丘珠の〝名物〟である風をよけるのにも役立ってくれているようです。
僕は、障壁として植えたヒマワリやトウモロコシは刈り取らずにそのまま残して、翌年、マメ科やウリ科のつる性植物などの添え木代わりに利用しています。そして、バンカープランツとして植え、役目が終わった植物は、緑肥やマルチ材として利用します。住宅地の菜園でも、このような背丈の高い植物たちを簡単にできるナチュラルな塀としてデザインし、植えてみるといいでしょう。
(西條正幸・ビオプラス西條デザイン代表)
隣地との境界上に並ぶ背丈まで成長したソルゴーの障壁。右側が収穫の進む有機農園=9月初旬
畑の境に昨年植えたヒマワリの茎を刈らずに残して、今年はエンドウやツルムラサキの支柱に利用しました。
=5月初旬の種まき