北海道新聞 朝刊連載 平成23年 1月27日掲載
『月と畑』
僕が丘珠有機農園の仲間入りをする以前の話ですが、家や家具を作る良い木材は、山から木を収穫する時期によって決まる、という話をTVで見ました。
「新月の木」を初めて知った時です。その数年後、偶然その話の舞台となったオーストリアの山奥にある製材工場、トーマ社を訪ねる機会に巡り合い、さらに月と植物との関係に興味を持つことになりました。
簡単に説明すると、冬の新月の間に山から切り出した木材はカビない、狂わない、長持ちする、虫に食われないなど、質の良い木材になると言う話なのです。科学的根拠はないらしいですが、建築デザインの仕事をする僕にとっては、とても興味のある話でした。
月齢の月の満ち欠けに応じて、海面の潮の大きな満ち引きの関係と同じように、土中の水分と養分も、地表に向かって上下します。当然土に根を張る植物は、この影響を受け、約29,5日周期で水分と養分を吸収しているのです。 新月の頃は、土中の水分が下がる時期で、この時期に伐採した木材は水分が少なく、虫食いやカビの原因になる養分も少ないと言われています。信じがたい話ではありますが、日本の古い言い伝えでも、木には切旬があると言われているようですし、中南米の農民の間でも、月と植物の関係は言い伝えられていたようです。同じ理由で、畑の野菜達も月の影響を受けていることになります。
そんなわけで、僕が菜園生活を楽しむことになった最初のシーズン、作付けプランを書き込むために用意した手帳のカレンダー欄に、月の満ち欠けを書き込みました。
満月の頃は水分・養分が上昇するので、数日前に種まきをすると、発芽や成長が良いらしい。逆に新月の頃の種まきは良くないが、種を採取するのには適している。
葉菜や根菜でも収穫適期は違っているし、厳密に言うと、食べるために収穫する時期と、
保存のために収穫する時期は違うとか…ずいぶん面白いことが他にもたくさんあることを知りました。そんなことを書き込んだカレンダーは、複雑でぱっと見て分かりづらく、毎年書き込むのは大変…。 そんな思いで僕が製作した菜園カレンダーとノートには、月と菜園作業の関係を分かりやすくまとめてあります。
ただ実践してみると、早朝と週末頼みの家庭菜園では、お天気の影響や他の予定で、なかなか暦通りには作業は進みません。でも僕が言えることは、この年になって、夜、月をながめるのがとても楽しくなったこと。そして畑作業をする時に、その日のお月さんを恨めしく思う日もあること…。
月と菜園の関係が分かると、菜園生活がまた楽しいものになりますよ。
菜園カレンダーは月齢にあわせた畑作業を分かりやすくまとめました。
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集めた木は集積場で切りそろえ、天然乾燥のため貯木場へ移動します。
2月の新月に伐採したトドマツの木。幹を残し春まで
葉枯し乾燥させ雪解け前の早春に枝を払い集材しました。