北海道新聞朝刊連載 平成23年1月13日 掲載コラム
「冬の畑・スプラウト編」
この季節、菜園生活の楽しみは、春に向けた作付けプランを考えることですが、今年は冬の間でも楽しめる、室内栽培に挑戦しています。
まずは、昨年の秋に鉢上げしておいたパセリやルッコラなどです。毎年玄関先に置かれ、冬の間も少しずつ収穫し、我が家の料理に彩りを添えてくれる野菜達ですが、晩秋まで畑で元気な野菜やハーブは、そのまま冬の室内で育てることが出来るようです。更にこの冬は、手軽で短期間に収穫できるスプラウト栽培を始めてみました。
スプラウトとは、モヤシやカイワレダイコンでおなじみの、植物が発芽した新芽野菜のことですが、最近は、ビタミンやミネラルなど栄養が豊富な健康野菜として、いろいろな品種が栽培されているようです。
スプラウト栽培は、家庭にある物をリサイクルして、手軽に始められるところが良いと思います。
僕が準備したのは、果物のプラスチックトレー・梱包材のプチプチシート・ガーゼ・クッキングペーパーなどです。ブロッコリー・そば・レッドキャベツ・ミツバ・空心菜など数種類の種を取り寄せました。当然のことですが、新芽を食べるので、農薬を使っていない専用の種を購入しなければいけません。
僕が実践した栽培法を簡単に説明すると、まずプラスチックトレーの底の大きさに合わせて、プチプチシートを切ります。一皿に3~4枚くらいでしょうか、凸面を上にして並べます。その上にガーゼ(クッキングペーパー)を3~4枚、プチプチシートを巻き込むようにカットして敷き込みました。
次に、表面が浸る程度に水を入れ、前の晩から水につけておいた種を、重ならないようにびっしり並べます。2~3日で芽が出るので、水を切らさないようにし、芽が伸びるまでは、新聞紙などをかけて暗いところで育てます。5㎝位になったら、お日様の当たるところに出して緑化させますが、早く日に当てると伸びが止まるのでタイミングを計ります。水は、毎日交換しながら育て、10日ほどで食べられるようになります。収穫はハサミで切り取りながら、サラダでいただきました。
今シーズンは、スプラウト栽培用に、種を多めに採取しようと思っています。
取り残して棟立ちしてしまった葉物野菜は、「塔立ち菜」として食べられることを昨年知りましたが、残ったものはそのままにして花を楽しみ、最後に種を取っても良いでしょうね。
春からの菜園暮らしの楽しみが、また増えてしまいました。
雪に閉ざされた冬の北海道でも、工夫次第で、冬ならではの栽培を楽しむことが出来そうです。
鉢上げ野菜:右からルッコラ・パセリ・イタリアンパセリ
食べごろのスプラウト:ブロッコリー・ミツバと専用の種
2011年01月16日
「農を楽しむ」西條さんの菜園便り⑱
2010年12月27日
北海道新聞連載⑰
北海道新聞連載記事です。
北海道新聞 平成22年12月23日生活面掲載
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「農を楽しむ」-西條さんの菜園便り ⑰「畑の記録」
今年1年間楽しんだ菜園生活を、振り返ってみました。
今年の最大のテーマは、様々なコンパニオンプランツ(共栄植物)を組み合わせた栽培法に挑戦することでした。植物を組み合わせることで、病気や虫の被害を防いだり、作物の生育や味が良くなったりするのかを、試しました。
肝心の作物の成果はというと、まずタマネギとカモミールの混植は、カモミールの成長が良過ぎて、タマネギが日陰になってしまい、生育不足で失敗。その代わりに、豊作のカモミールから、お茶用の花がたくさん収穫できました。
西洋ネギのチャイブを縁取りにして栽培したナスとピーマンは、今までにないくらい良く育ち、晩秋まで収穫を楽しみました。
また、トマトの味が変わるのか、ネギとトマトの混植対ハーブとトマトの混植の味比べは、残念ながらどちらもあまり違いは感じられませんでしたが、大きな問題もなく収穫できたことが何よりでした。
他にもいろいろ試し、混植による効果を期待したのですが、そう簡単に目に見えるような結果が出ないのかもしれません。しかし、畑がたくさんのハーブや野菜でにぎやかになり、多様な植生と、小さな生き物たちが混生する僕の菜園生活は、心と体が癒やされ、豊かな食卓と暮らしを感じるとても良い1年だったと思います。
昆虫による受粉を促す効果のあるハーブのポリジを、カボチャなど実のなる作物と混植したところ、明らかに良い成果が見られた、と畑の仲間たちが話していました。
さて来シーズンに向けて、冬の間の楽しみは、春からの植え付けプランを考えることです。このとき頼りになるのは畑の記録です。何処に何を植えたのか、さらに数年前にさかのぼって記録されていると、とても助かります。作物には、続けて同じ場所で栽培すると、連作障害を起こしてしまうものもあります。記憶力にめっぽう自信がなく、農作業の経験も未熟な自分のために作った菜園記録手帳が「菜園NOTE」です。
野菜作りを始めて、必要な情報を書き留めたりしていましたが、畑を続けてゆくためには、記録も残さなければと思い、使いやすい菜園用の手帳をいろいろ探したのだけれど、無い・・・無かったのです。
現場(畑)で困ったときに役立つ情報、作物の栽培方法や混植の組合せが分かる情報がついた小さな手帳があると良いのに・・・。実はそんな思いで作った「菜園NOTE」がきっかけでコラムを書くことになりました。
(西條正幸・ビオプラス西條デザイン代表)
2009年から発売を開始した菜園ノートは今年で3年目。内容も益々充実して大人気です。
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ノートとカレンダーで、菜園生活をお楽しみください。
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2010年12月14日
北海道新聞連載⑯
北海道新聞連載記事です。
北海道新聞 平成22年12月9日生活面掲載
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「農を楽しむ」-西條さんの菜園便り ⑯「トマトの保存」
畑はすっかり雪化粧、楽しかった菜園生活もしばらくお休みです。
我が家の冬の食卓では、あまりお目にかからなくなる野菜があります。夏から秋にかけて、食卓のテーブルの常連だったトマトです。
スーパーへ行くと、いつでも並んでいるにもかかわらず、冬の間はめったに買って食べることがありません。夏の日差しをあびて育った、まるで太陽のような野菜だからでしょうか。
季節に関係なく、いつでも、どこのものでも手に入る時代ですが、それはそれで、うれしいような寂しいような複雑な気分になります。
そんな我が家の冬の楽しみは、たくさん収穫したトマトを保存して、少しずついただくことです。
野菜作りを始めるまでは、たくさん買い込んでいたホールトマトの缶詰が、すっかり姿を消しました。 昨年までは調理用のイタリアントマトでトマトソースを作り、小分けにして冷凍保存していましたが、今年は初めて、トマトソースの瓶詰めに挑戦しました。
まず、大きめのずんどう鍋にお湯を沸かし、瓶とふたを沈め煮沸消毒します。同時に隣の鍋で、ざく切りにしたサンマルツアーノ(自家製の有機トマト)に、少量の塩を加えてオリーブオイルと一緒に煮込みます。以前は、ニンニクやハーブなどを加えていましたが、結局調理のときに味付けするので、今年は余計なものを入れずにシンプルにしました。
トマトを煮込み終えたら、煮沸し終えた瓶に詰め、すぐに蓋をしてずんどう鍋に戻します。このとき、ふたは一旦きっちり閉めた後、少し緩めます。こうすることで、瓶の中の空気が抜けて密閉状態になります。約20分間、煮沸した後、取り出した瓶のふたをきっちり閉めなおし、瓶を逆さまにして置き冷まします。すっかり熱が冷めたら、日付のラベルを貼って完成です。
今年は400mℓの瓶を12本作りました。冬の間、パスタソースやミネストローネなどにしていただくことになります。
一方、ミニトマトは、ドライトマトにして保存します。半分に切って種を取り、オーブンで乾燥させます。小まめに水気を取りながらゆっくり乾燥させるので、ちょっと面倒でしたが、ドライトマトは、凝縮された味が格別です。正確には半なまドライトマトですが、半分は密閉袋に入れ冷凍保存、残りはオリーブオイル漬けにしました。
ドライトマトの乾燥は、本州では天日干しができるのでしょうが、北海道の路地栽培では、完熟する時期が合わず、少し難しいと思います。種から有機栽培、無化学肥料で育てた我が家の冬のトマトです。
(西條正幸・ビオプラス西條デザイン代表)
丸い形のベルナーロゼ(左)やチェリートマト(右上)、イエローアイコ(その下)など9月に収穫したトマトたち
瓶詰めしたサンマルツアーノのトマトソースと、ブラジルミニをオープン乾燥させたドライトマト
2010年12月14日
北海道新聞連載⑮
北海道新聞連載記事です。
北海道新聞 平成22年11月25日生活面掲載
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「農を楽しむ」-西條さんの菜園便り ⑮「堆肥作り」
楽しかった有機菜園での作業も、まもなく終ろうとしています。僕たちの有機農園の仲間達は、すでに片付けも終わり、冬を迎える準備が出来ているようです。
僕はと言うと、もう一仕事、来シーズンのために、堆肥を積み上げておく作業が残っています。毎年、落ち葉が積もった頃をめがけて、山のわき道や公園の歩道に、集めに行きます。都会では、ゴミ扱いされている落ち葉も、僕にとってはお宝です。
堆肥づくりのための落ち葉集めの注意点は、分解が遅いイチョウやサクラなどの広葉樹や、笹・針葉樹などの葉は避け、ナラ、カエデ、ナナカマドなどを集めるように心がけます。
集めた落ち葉は、大きなビニール袋に詰め込んで、畑に運び込みます。僕の堆肥は、落ち葉に米糠をふりかけ、水をかけて踏みつけて、積み重ねていくだけの簡単なものです。今年は、コンフリーの葉を漬け込んで出来た液肥を、水と一緒にかけてみました。翌年、うまく分解が進み、パラパラと軽い堆肥が出来上がったときには、山の土はこうして出来ているのだと、うれしくなります。今年は、昨年積んだ堆肥を、移植したイチゴの植え床や、不耕起用の植え床に蒔き、藁や片付けた草をかけて冬を越します。水はけが悪く、すぐに硬くなってしまう僕の畑では、こうすることで、土が固くならず、翌年の春、畑仕事が楽しく進んでいきます。
また、来シーズンに向けて、余市の養鶏農家さんから、鶏糞を分けてもらいに行きました。安全な自家製飼料を食べ、平飼で育つ元気な鶏の鶏舎から、鶏糞をスコップですくい集めます。来シーズンは、鶏糞を上手く使った堆肥づくりにも、挑戦したいと思います。
僕達が出来る、循環する暮らしの原点は、街で暮らす人々が、消費するだけの生活から、生産する暮らしを始めることだと思います。ゴミと思われている資源を有効に使い、肥料や堆肥に変え、自家製の野菜や果樹を育て、食べた残葉はまた資源に変わる。単純なことですが、一番身近な暮らしの中にこそ、様々な環境問題を、リアルに感じさせる時間があるように思えます。
(西條正幸・ビオプラス西條デザイン代表)
お知らせ
12月4日(土)午後1時30分から札幌東区で西條さんの菜園生活講座「心地よい暮らしと住い」があります。僕の有機菜園生活と自然派住宅づくりを始めた話を中心に、肌に優しいナチュラル蜜蝋クリームづくりのワークショップを企画しました。
参加費¥1000 (みつばちクリームキット付き) 定員15名
お問い合わせは ビオプラス西條デザイン TEL011-774-8599までどうぞ
集めてきたミズナラの落ち葉を踏みつけながら積み上げ、土をかけた後、ビニールシートで覆い養成します。
鶏舎の床から鶏ふんをすくい集めます。
2010年11月12日
北海道新聞連載⑭
北海道新聞連載記事です。
北海道新聞 平成22年11月11日生活面掲載
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「農を楽しむ」-西條さんの菜園便り ⑭「晩秋の楽しみ」
晩秋になると、菜園生活の楽しみも少なくなってきます。 僕達の有機農園では、今年最後となる月1回の共同作業日を迎えました。(実際には7日です)
この時期の楽しみの一つは、来シーズンに向けての種取り作業です。
まずは、豆。収穫して乾燥させておいた、種豆用マメの皮を剥いて種をとりだします。カサカサした感触とマラカスのような乾いた音は、気持ちが軽やかになるようでとても好きです。さやを食べる豆類も良いですが、完熟の豆も種類がたくさんあり、見ているだけでも楽しくなります。僕の菜園で今年栽培した豆類は、枝豆(茶豆)、白花豆、スナックエンドウ、5種類のインゲンです。枝豆は、背丈ばかりが伸びて肝心の実入りはさっぱりで、トウモロコシとの混植の成果は、見られませんでした。 今年初めて栽培した、白インゲン(銀手亡)は、有機農家さんから、食用に買った豆の残りを、そのまま種豆にしてみました。ちゃんと育つのか、不安だったのですが、約1,5㎏を収穫することが出来ました。来年の種を残して、残りは自家製の保存用トマトと一緒に、スープなどの煮込み料理で頂きます。
レタス・シュンギク・ルッコラなど、葉菜類の採種も大切です。注意するのは、アブラナ科野菜の種を採取する場合です。近くに他のアブラナ科野菜があると交配しやすいので、あらかじめ離したところで、種取り用に育てます。
混植用のマリーゴールドとナスタチウムの種取りは、畑を片付けながら、最後の仕事になります。毎年、霜が降りるまで花を咲かせているので、直前で刈り取ります。マリーゴールドは花冠ごと摘み取り、ナスタチウムは片付けたあとに落ちた種を拾い、乾燥させて保存します。
そして、亜麻も大切にしている植物です。毎年畑の一角を、小さなムラサキの可憐な花が彩ります。茎ごと刈り取って逆さにつるし、しばらく乾燥させます。小さく丸い果皮に小さな種が入っていて、取り出すのはひと苦労です。10年以上前、ドイツの自然健康塗料メーカーを視察した時、工場の周りでは、契約栽培されている亜麻畑が広がっていました。僕が仕事で、自然素材の住宅や家具を作る時に使う天然塗料の主原料は、亜麻の種を搾った亜麻仁油なのです。種を増やし、いつか自家製の亜麻仁油で塗料を作るのが、この頃からの夢でもあります。
最後に、一番大切に育てたのは、2種類のズッキーニです。種を取る株を決めて、元気の良いズッキーニだけを、大きくなるまで育てました。先月収穫していた実から、いよいよ種を取る日が来ました。 自然栽培の農家さんが、スプーンを使い大切に種を取っている姿を見て、今年は僕も真似をして見ました。 やさしくすくった種についた果肉を、水できれいに洗い、乾燥させて保存します。 無農薬・無化学肥料、そして種は自家採取で野菜作り。楽しみはさらに広がります。
(西條正幸・ビオプラス西條デザイン代表)
札幌市丘珠有機農園での今年最後の共同作業。
倉庫の片付けと壁の塗装です。
ズッキーニはブラックビューティーとシマシマ模様のココゼリの2種類から種を取りました。
自家採取用の野菜は、交配種でなく固定種から育てます。
2010年10月28日
北海道新聞連載⑬
北海道新聞連載記事です。
北海道新聞 平成22年10月28日生活面掲載
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「農を楽しむ」-西條さんの菜園便り ⑬「袋栽培の楽しむ」
忙しかった畑作業も、後片付けに追われる季節になりました。収穫できる作物も残り少なくなってきましたね。
僕の畑でも、徐々に片付けを始め、残る野菜は、キャベツ、レタス、白菜、ホウレン草などの葉物野菜、そしてニンジン、ゴボウなどの根菜類となってしまいました。
秋に収穫する予定だったダイコンは、種を蒔きそびれてしまい、もっぱら、仲間のおこぼれに預かっているのですが、これはこれで、いろいろな種類のダイコンを頂けるので、嬉し楽しい気分です。根菜類は収穫後、土に植え込んで、保存します。また、ホウレン草は雪の下で冬を越して、来春一番の収穫野菜になる予定です。
丘珠有機菜園は、水はけが悪く、粘土質の土がガチガチに固くなるので、根菜類の栽培には苦労します。僕は割り切って、収穫しやすいミニサイズのダイコンやゴボウを作っていました。でも、細いゴボウは、掘り起こすのがひと仕事です。そこで今年は、ゴボウの袋栽培に挑戦してみました。
高畝を利用し、堆肥、炭、油粕などを入れて軽く耕起した後、土を入れた不織布の袋を、少し間隔を空けて、高畝に逆さにして並べていきます。そして、袋の底を開いて、ゴボウの種を蒔き、わざと広くした袋と袋の間には、マリーゴールドの苗を植えたのです。
これは、見た目が綺麗なことと、センチュウの被害を防いでくれるコンパニオンプランツ (共栄植物)として、根菜類との相性が良いからです。さらに、高畝の両側の列にカブの種を蒔き、3種の混植栽培にしてみました。
ゴボウの追肥は、草木灰を表土に施肥しただけで、あとは得意のほったらかし状態でした。待ちに待った収穫の日、袋を持ち上げると、崩れた土の中からゴボウが顔を出しました。ちょっと細身のミニゴボウです。初収穫は豚汁。柔らかくてとても美味しいゴボウをいただきました。
袋栽培は、どこでも手軽に、根菜類を栽培出来るところが良いと思います。マンションのベランダやアスファルトの上でも栽培が可能ですし、ダイコンやニンジンのほか、ジャガイモやサツマイモ、長ネギなどの栽培にも便利なようです。来シーズンは、もう少し種類を増やして、栽培してみようと思います。また、袋栽培の他に、古タイヤを積み重ねて利用した栽培法も、同じ効果があります。どちらも資材を再利用して、何度も使え、収穫も楽に出来るところが良いところです。
菜園生活は、ゴミや廃資源を有効利用し、持続可能な暮らしを楽しみながら、実感することも出来る、すてきな暮らしなのです。
(西條正幸・ビオプラス西條デザイン代表)
袋の中でごぼうがすくすく。
袋を持ち上げ、ゴボウを収穫。
袋と袋の間に混植したマリーゴールドが美しく咲き誇っています。
2010年10月14日
北海道新聞連載⑫
北海道新聞連載記事です。
北海道新聞 平成22年10月14日生活面掲載
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「農を楽しむ」-西條さんの菜園便り ⑫「3種競演」
いよいよ秋本番。天気は気まぐれで、寒暖の差も激しくなってきました。
暑さが収まり、少し元気を取り戻した野菜たちも、徐々に終演を迎えようとしています。
僕の有機菜園で、今年初めて栽培に挑戦した作物の一つに、サツマイモがあります。
何かとお世話になっている、砂川のハーブ農園さんから、金時、紅東、パープルスイ―ツの3種類の苗をそれぞれ一株、思わず衝動買いをしてしまいました。
育て方を聞くと、鶏糞をまき、土を盛って、ビニールマルチを敷き、植え込む。夏までは、あまり雨にあてず、乾燥気味で小さく育て、夏以降一気に成長を促す・・・といったようなアドバイスだったと思います。
でも、この頃はすでに、ほぼ定植や種まきを終えていて、どこに植えたらよいか。そこで思いついたのは、花豆とルッコラをコンパニオンプランツ(共栄植物)として混植した植床です。
すでに1mほどの円形に土を盛った植え床に、ルッコラの種をばら撒きし、その周りに竹竿を立てて、根元に白花マメを植えていました。少し強引ですが、その中央に穴をあけ、ミミズの堆肥を一握り撒き、ちょうど3箇所作っていた植床に、それぞれ一株づつ苗を植え込んでみました。
ルッコラはグングン成長し、見る見るサツマイモの苗をのみこんでいきました。 もともとマルチ代わりに撒いたルッコラが、サツマイモのビニールマルチの代わりになればと思ったのですが、少々生育が良すぎたみたいです。
結果は別として、土の中でヒルガオ科のサツマイモ、表層でアブラナ科のルッコラ、空中でマメ科の花マメの3種類が競演する植床のデザインにすっかり満足してしまった僕です。
ルッコラは、別名「ロケット」と呼ばれる独特の香りと辛味が特徴のハーブの仲間で、白い十字形のかわいい花を咲かせます。 摘み取るとゴマのような良い香りを放つ、大好きな野菜の一つです。
夏の間も元気に育ち、何もしなくても、あまり虫害にあうこともありません。種を自家採種しておき、来年も遠慮せずにたっぷりと使います。
本来の主役の座を明け渡した格好の白花豆は、種豆を撒くのが少々遅かったせいか、10月になっても花を咲かせていました。豆の収穫までもう少しかかりそうです。
そして肝心のサツマイモ。間引かれて隙間が出来たルッコラの間から蔓を伸ばし、収穫の時期がだんだん近づいてきたようです。我が家では、薪ストーブに、新聞紙とアルミホイルでくるんだイモを放り込みます。有機栽培で育てた自家製の3種類の焼きイモを食べ比べることにしましょう。
(西條正幸・ビオプラス西條デザイン代表)
畑の隅に作った円形の植え床で、異なった性格の3種類の野菜を栽培
十字型のかわいらしいルッコラの花(右)と、遅咲きとなった白花豆の花の競演
2010年09月28日
北海道新聞連載⑪
北海道新聞連載記事です。
北海道新聞 平成22年9月23日生活面掲載
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「農を楽しむ」-西條さんの菜園便り ⑪「ネバネバ作物」
僕たちの有機農園では、収穫もずいぶん進み、気の早い菜園仲間は、既に畑の片付けを始めています。残暑もようやく収まり、本来の秋らしい気候が戻ってきました。
そんな中、この夏の高温続きで恩恵を受けた作物があります。昨年まで、ビニールのマルチやトンネルをかけずに、露地栽培を続けてきたオクラです。昨年は暖かくなってきた6月の中ほどに、2品種の種をじかまきして栽培していましたが、気温が低いせいか、背丈が低く、多くは収穫できませんでした。
そこで今年は、5月から自宅で育てた苗を移植。気温が上がるまでは、不織布のトンネルを掛けての栽培に変えてみました。プラスチック繊維を畑で使うことに抵抗があったのですが、上手に使うと何度も使えることがわかり、ちょっと妥協してしまいました。また、植え床も昨年までとは違っています。
僕は、一昨年から、肥料に牛ふんや鶏ふんなどの動物性の肥料を使わず、米ぬかや油かすなど植物性の肥料だけを少量使った野菜作りをしていました。有機質の肥料の中でも、使われている原料が単純なので安心感があったからなのですが、今年はここの苗床だけ、鶏ふんを使ってみました。3本の植え床のうち、2本をオクラ専用にし、残りの1本はモロヘイヤです。
トンネルと高い気温のおかげか、今年のオクラの生育はとても良く、今までで最高の収穫を毎日楽しめました。僕が栽培しているのは、一般的な五画オクラと丸い島オクラ、色鮮やかなムラサキオクラの3種です。何と言っても、オクラの花はとてもかれんです。南国っぽい雰囲気も良いですね。また、モロヘイヤは夏でも虫も付かずによく育ち、葉先を摘むと新芽が次々伸びるので、週に2度ほどの間隔で収穫していました。どちらの野菜も、ゆでるとネバネバ感がたまらない健康野菜。納豆と交ぜると絶妙のネバネバ食感を発揮します。
ただ、鶏ふんの影響か、他の作物と比べてみると葉の虫食いが多かったのです。有機質肥料でも、未完熟なものや、使用量を誤ると虫害が多くなるのはこういうことなのか、と実感しました。また、コンパニオンプランツとして混植する植物の見当が付かなかったので、ここは困ったときの万能植物「マリーゴールド」を、それぞれ植えつけてみました。オクラもモロヘイヤも背丈が高く収穫は高い位置ですむので、マリーゴールドは収穫の邪魔にならず、結果オーライです。野菜とハーブの混植では、成長丈や成育域の関係も大切なのだと、また実感しました。
実際に経験すること、感じること、成功、失敗、すべてが菜園生活の楽しみです。
(西條正幸・ビオプラス西條デザイン代表)
よく育ったモロヘイヤを収穫。左後方はマリーゴールドと混植したオクラ
とても美しくかれんなオクラの花
2010年09月09日
北海道新聞連載⑩
北海道新聞連載記事です。
北海道新聞 平成22年9月9日生活面掲載
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「農を楽しむ」-西條さんの菜園便り ⑩「虫から野菜守る」
気がつけばもう秋です、今シーズンの畑仕事も終盤にさしかかってきました。
僕の畑では、例年はお盆を過ぎて涼しくなると、夏バテ気味の野菜たちが元気を取り戻すはずなのに、今年は元気がありません。今までにない暑さと湿度の影響なのでしょうか、畑の環境も変わったような気がします。特に困ったのは、早朝の収穫時に、執拗に蚊の襲来を受けたことでした。
そんな時、僕が使っているのは、手作りの虫よけハーブスプレーです。釣りやアウトドアに20年来使い続けているのですが、無添加で安心、効果も抜群でおすすめです。作り方はとても簡単で、植物性のエチルアルコール1に対して清水2くらいの割合で溶液を作り、好みのハーブの精油を加えるだけです。精油の量は適当なのですが、スプレーして肌で香りを感じるくらいが目安でしょうか。
僕のお気に入りはハッカ、ラベンダー、モミなどを加えたオリジナルブレンド。市販の小さなスプレー容器に入れて畑の道具箱に入れておきます。野菜に農薬をかけないのですから、体にも化学薬品をかけたくありません。
畑の虫といえば、僕たちの有機農園では、イネ科のソルゴーやエンバク、マメ科のヘアリーベッチ、キク科のヒマワリなど虫のすみかになる植物を、畑の境に植えています。「バンカープランツ」(天敵温存植物)といわれ、野菜を守るための植物で、意図的に昆虫たちが集まってくるような仕組みをつくります。害虫を食べてくれる益虫たちが多いせいなのでしょうか、僕の畑では、アブラムシの姿をめったに見ることがありません。逆にアブラムシを食べてくれるテントウムシを見かけると、なんだかうれしくなります。
これらの背の高い植物は、障壁として、近所の畑から飛んでくる農薬を防ぐ「ガードプランツ」(障壁植物)としても役立つことで知られています。また、僕たちの有機農園がある札幌市東区丘珠の〝名物〟である風をよけるのにも役立ってくれているようです。
僕は、障壁として植えたヒマワリやトウモロコシは刈り取らずにそのまま残して、翌年、マメ科やウリ科のつる性植物などの添え木代わりに利用しています。そして、バンカープランツとして植え、役目が終わった植物は、緑肥やマルチ材として利用します。住宅地の菜園でも、このような背丈の高い植物たちを簡単にできるナチュラルな塀としてデザインし、植えてみるといいでしょう。
(西條正幸・ビオプラス西條デザイン代表)
隣地との境界上に並ぶ背丈まで成長したソルゴーの障壁。右側が収穫の進む有機農園=9月初旬
畑の境に昨年植えたヒマワリの茎を刈らずに残して、今年はエンドウやツルムラサキの支柱に利用しました。
=5月初旬の種まき
2010年08月30日
北海道新聞連載⑨
北海道新聞連載記事です。
北海道新聞 平成22年8月26日生活面掲載
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「農を楽しむ」-西條さんの菜園便り ⑨「畑の多様性」
この夏、僕の畑で最も順調に育っている作物といえば、ナスとピーマンです。雨の好きな野菜だからでしょうか?雨の多い今シーズン一番の元気印です。
不耕起栽培用の90cm×3mの高ウネの植え床「レイズドベッド」2畝に、10株ほど植えました。と言っても、植えているのはナスだけではありません。まずユリ科のチャイブを、畝の縁取りに移植しました。更にセリ科のパセリ、キク科のカモミール、ムラサキ科のポリジなど多年草や、こぼれ種から自生えしたハーブ類を、畝の両端に移植しました。ピーマンとシシトウも、となりの畝で同様に栽培しています。ナスやピーマンの苗を植え込む頃には、チャイブやカモミールは花を咲かせ始め、更に夏に近づくと、ポリジが花を咲かせるといった具合です。でも「欲ばりな畑」が自慢の僕です。ナスやピーマンの株間に、つるなし種のスナックエンドウの苗を植えました。
成長して、ナスにつるが上手く絡むと良いなと思ったのです。結果は、エンドウの成長が早く、結局竹の支柱をたてる破目になりました。タイミングを計って、種まきをした方が良かったのかもしれませんね。エンドウの収穫が落ち着く頃、ナスの収穫が最盛期となりました。実は、昨シーズンは種まきをして、苗を作り、定植の際には、根の先端を切り込んでから植えるスパルタ栽培に挑戦したのですが、見事に惨敗。そこで、今年は苗を買い、春先にパオパオのトンネルで風と寒さ対策をし、自家製ぼかし肥料の追肥なども怠らないで、育てたところ、豊作となりました。
ナス科の栽培は4~5年おきに栽培するのが常識で、連作はタブーと言われていますが、来シーズンはあえてナスの連作栽培に挑戦しようかと思っています。相性のよい植物を中心に多様な作物を混植することで、連作障害を緩和できれば、限られた場所の家庭菜園でも毎年楽しむことが出来ると思います。
建築デザイナーの僕が、目標にしている畑作りのテーマは、住宅街の中でも映える、素敵なキッチンガーデンをつくることなのです。野菜や花が、整然と綺麗に並べられた、かわいらしいキッチンガーデンも良いですが、僕の場合は、多様な植物が、ランダムに咲き乱れる、イングリッシュガーデンのような菜園がイメージです。野菜が主役の菜園に、いつも何処かで花が咲き続けている。ハーブ類を混植することで、コンパニオンプランツ(共栄植物)として作物を害虫から守り、成長を助けるだけではなく、緑に彩りを添える役割もあり、畑がより楽しい場所になること請け合いですよ。
(西條正幸・ビオプラス西條デザイン代表)
チャイブの縁取りとハーブでにぎやかなナス科用の植え床
ナス科作物(シシトウ)の間に生育を助け合うマメ科作物(エンドウ)を混植
夏野菜:僕の畑で今元気印の野菜たち