北海道新聞 朝刊連載 平成23年3月10日掲載
「冬でも堆肥づくり」 ミミズコンポストの話
僕は冬の間でも、春からのシーズンに備え、せっせと自宅で堆肥づくりを進めています。 僕が使っている堆肥ボックスは、再生プラスチックで出来ているオーストラリア製のミミズコンポストです。使い始めて、ようやく2年目の冬を越しました。
コンポストで使うミミズは、畑の土から出てくる大きなフトミミズではありません。釣り餌として売られているシマミミズで、畑の堆肥や生ゴミの中でもよく見かけます。フトミミズは縦の動きで土を深く起こし、シマミミズは横の動きで土を柔らかくすると言われているのですが、有機物を分解し、栄養素の高い土を作ってくれるのは、シマミミズの方です。
僕のコンポストは、大きな4段の重箱のようになっていて、一番下段の受け皿には水抜き口が付いています。生ゴミ用のバケツコンポストと同じ理屈ですが、ミミズのオシッコと水分が貯まった、すなわち液体肥料を取り出すためのものです。正確に量ったわけではありませんが、ひとシーズンで2リットルのペットボトル10本以上は取り出すことが出来ました。この液肥は2~3倍に薄めて、週に1回ほどの割合で使います。
残りの3段のお重の底は網状になっていて、ミミズが上下に移動できるようになっています。最初は2段から始め、徐々にお重をかさねていきます。1番上の段が食堂ならば、2段目が居間、3段目は寝室・・・と言ったところでしょうか。コンポストの中には、ミミズの床として、水に浸したヤシガラ繊維やピートモスを基材として敷き込みます。
この一番上の段に、茶葉やコーヒー殻・野菜、果物の屑などを混ぜ込みます。
ある程度分解が進んで量が増えてきたら、一番下の段から、出来上がっているミミズ堆肥を取り出します。 出来上がったミミズ堆肥は乾燥させ、ふるいにかけて保存しています。サラサラになった堆肥は扱いやすく、ミネラル分がとても豊富で、苗作りやプランター栽培などにも重宝しています。取り出して空いたお重は、また上段に乗せて、繰り返し続けます。
ミミズが作る堆肥と液肥は、臭いが気にならず、室内でも使うことが出来る、貴重な有機肥料です。自宅の居間でこれから始まる苗作りには、欠かせません。
ミミズコンポストは、理屈が分かれば自作も可能です。また様々なコンポストのスタイルがあると思いますが、自宅から出るゴミを土に還すシステムを取り入れることは、循環を感じる暮らしにつながり、とても大切なことだと思います。これも有機菜園あってのことですが、家の横に小さな畑があることで、コンポストを取りいれた野菜作りの楽しみが増えると思います。
冬季間は事務所の入り口横に置かれているミミズコンポスト。春日なると外に出します。
野菜、果物。などのくずを混ぜた最上段のコンポスト
3段目のきれいに分解された堆肥とミミズ
2011年03月29日
「農を楽しむ」西條さんの菜園便り22
2011年02月24日
『農を楽しむ』西條さんの菜園便り 21
北海道新聞 朝刊連載 平成23年2月24日掲載
畑の仲間たち
先週は、仕事で東京方面へ行っていました。都会の真ん中で、梅が花を咲かせているのを
見かけたり、冬野菜がまだ残っている小さな畑を電車越しに見つけたり、一足早く、春の
気配を感じることが出来ました。
僕が菜園生活を始めて、今シーズンで早5年目になります。そもそも、菜園生活を始める
きっかけになったのは、いくつかの偶然が重なったことです。1つは、僕の娘が小さい頃、
アトピー性皮膚炎で通っていたお医者さんH先生と知り合ったことです。
H先生はアレルギーの専門医ですが、自身が過敏症のため、自邸の建築では素材選びに
苦労された経験のあるお医者さんでした。 『健全な体は、食べ物にも影響される』との
考えから、有機栽培の野菜作りを続けていました。
そしてもう1人は、農業の専門誌を出版する会社に勤めるTさんです。こちらは、札幌市が
毎年募集している農業塾を卒業して、将来就農を夢見ながら、最近流行の半農半Xを実践
するサラリーマンです。 有機野菜のようなピュアな家を建てたくて、 僕の会社を訪
ねてきました。田舎にある、古い農家のようなたたずまいの家を建てたのは、5年前です。
そしてこの二人が通う畑はご存知、札幌東区の『丘珠有機農園ヒバリーヒルズ』です。
ここは我が家から、車で5分ほどの距離にある畑で、農薬と化学肥料を使わない有機農業
の専用農園です。 この2人の誘いを受けたことがきっかけで、菜園生活を始めることに
なりました。当時の僕は、パーマカルチャーという、オーストラリア発祥の永続的暮らしの
ためのデザイン概論に凝っていて、このシステムに欠かせない、農業のテクニックを実践で
きないかと考えていた時でもありました。教本を片手に、失敗しながらも、めげずに何とか
やっています。
うかうかしている間に、まもなく苗作りが始まりますね。
最近は、札幌市内にも市民農園が増えていますが、有機農業専用の農園の話はあまり聞きま
せんが、本州では、有機専用の市民農園が大人気のようです。
僕の家づくりやヒバリーヒルズの仲間達との農的暮らしなどについて、3月5日(土)
北海道海 クリスチャンセンターで開く菜園生活講座『オーガニックカレッジ2011』で
お話します。
(お問い合わせは先・ビオプラス西條デザイン TEL011-774-8599)
安心して野菜作りが出来る環境を求めている人は、大勢いると思います。今年は菜園ブームに
更に拍車がかかることでしょう。有機栽培専用の市民農園が増えることを期待しています。
渋い道南杉の下見張りのTさん宅。
昨年春、会費で購入した中古の耕耘機の試運転風景。
●3月5日(土)菜園生活『オーガニックカレッジ2011』はホムページでご案内しています。
saijo.e-house.or.jp 又は オーガニックカレッジ2011で検索してください。
2011年02月19日
『農を楽しむ』西條さんの菜園便り20
北海道新聞 朝刊連載 平成23年2月10日掲載
『冬の畑・プランター栽培編』
今年のように、毎日の雪ハネ作業が続くと、ますます春が待ち遠しくなります。
僕は、昨年小さなプランターを買い込んで、初めて室内栽培に挑戦してみました。
我が家の、冬の室内の温度は、23度前後で安定していて、最低でも10度ほどです。
これはいけるのでは・・・とちょっと甘い考えで、早速用意を始めました。
角型プランター以外に、スチール製の網棚と、培養土、ゴロ土を買い、種は、昨年の
残りを使います。12月中旬、 サラダミックス・レタス・シュンギク・コマツナ・
ラディッシュなどを種まきしました。ちょうどスプラウト栽培を始めた頃だったので、
一緒にセッセと水やりをしました。ところが、思いとは裏腹に、プランターの野菜は
ヒョロヒョロと、スプラウトの様になってしまいました。どうやら水のやりすぎだっ
たようです。仕方なく、早々にあきらめて、スプラウトとして食べてしまいました。
そして、もう少し乾燥気味で育てなければと、再チャレンジしたのは、大掃除の役目
を終えた、大晦日の夕方です。まさか、大晦日に種まきをするとは、思ってもいませ
んでした。 菜園ノートで、月と種まきの関係を見てみると、まもなく新月が近づき、
種まきには不向きとのこと。思わず舌打ちをし、『人生上手くいかないなー』などと、
大げさなことを考えながらも、2010年最後の種まきをしました。
それから1か月以上が経過しています。実は2度目の種まきに備えて、植物栽培用の
蛍光灯を用意しました。「冬の野菜は石油で出来ている…」なんて、偉そうな事を言
っていたはずなのに…。 自称エコファーマー失格ですね。
どうやら、冬の室内栽培での大きな問題は、太陽光が足りないことのようなのです。
野菜を栽培するための日射時間は、最低6時間と聞いたことがあります。1月の札幌
の天気は、最悪でした。適当な室温が保たれていても、やはり雪の日が多いと、太陽
光が不足し、生育がうまくいかないようです。冬とはいえ、明るい窓辺で、お日様を
いっぱい浴びせられるよう、工夫が必要かもしれませんね。
僕は、コンセントタイプのタイマーをセットして、毎日10時間、蛍光灯の光を当て
ながら栽培していますが、それでもなかなか思うように成長していません。土寄せと
間引きをして、追肥をし、様子を見ることにしましょう。さて、無事に収穫できるま
で成長するのか。 冬の我が家の畑です。
窓際にキャスターをつけたスチール棚を組み立てて9種類の野菜を栽培中。種まきから40日経過。
右からミズナ・シュンギク・ラディッシュ それぞれの棚の下に植物栽培用の蛍光灯を設置。
2011年01月28日
『農を楽しむ』西條さんの菜園便り 19
北海道新聞 朝刊連載 平成23年 1月27日掲載
『月と畑』
僕が丘珠有機農園の仲間入りをする以前の話ですが、家や家具を作る良い木材は、山から木を収穫する時期によって決まる、という話をTVで見ました。
「新月の木」を初めて知った時です。その数年後、偶然その話の舞台となったオーストリアの山奥にある製材工場、トーマ社を訪ねる機会に巡り合い、さらに月と植物との関係に興味を持つことになりました。
簡単に説明すると、冬の新月の間に山から切り出した木材はカビない、狂わない、長持ちする、虫に食われないなど、質の良い木材になると言う話なのです。科学的根拠はないらしいですが、建築デザインの仕事をする僕にとっては、とても興味のある話でした。
月齢の月の満ち欠けに応じて、海面の潮の大きな満ち引きの関係と同じように、土中の水分と養分も、地表に向かって上下します。当然土に根を張る植物は、この影響を受け、約29,5日周期で水分と養分を吸収しているのです。 新月の頃は、土中の水分が下がる時期で、この時期に伐採した木材は水分が少なく、虫食いやカビの原因になる養分も少ないと言われています。信じがたい話ではありますが、日本の古い言い伝えでも、木には切旬があると言われているようですし、中南米の農民の間でも、月と植物の関係は言い伝えられていたようです。同じ理由で、畑の野菜達も月の影響を受けていることになります。
そんなわけで、僕が菜園生活を楽しむことになった最初のシーズン、作付けプランを書き込むために用意した手帳のカレンダー欄に、月の満ち欠けを書き込みました。
満月の頃は水分・養分が上昇するので、数日前に種まきをすると、発芽や成長が良いらしい。逆に新月の頃の種まきは良くないが、種を採取するのには適している。
葉菜や根菜でも収穫適期は違っているし、厳密に言うと、食べるために収穫する時期と、
保存のために収穫する時期は違うとか…ずいぶん面白いことが他にもたくさんあることを知りました。そんなことを書き込んだカレンダーは、複雑でぱっと見て分かりづらく、毎年書き込むのは大変…。 そんな思いで僕が製作した菜園カレンダーとノートには、月と菜園作業の関係を分かりやすくまとめてあります。
ただ実践してみると、早朝と週末頼みの家庭菜園では、お天気の影響や他の予定で、なかなか暦通りには作業は進みません。でも僕が言えることは、この年になって、夜、月をながめるのがとても楽しくなったこと。そして畑作業をする時に、その日のお月さんを恨めしく思う日もあること…。
月と菜園の関係が分かると、菜園生活がまた楽しいものになりますよ。
菜園カレンダーは月齢にあわせた畑作業を分かりやすくまとめました。
(Amazon.comで販売中です)
集めた木は集積場で切りそろえ、天然乾燥のため貯木場へ移動します。
2月の新月に伐採したトドマツの木。幹を残し春まで
葉枯し乾燥させ雪解け前の早春に枝を払い集材しました。
2011年01月16日
「農を楽しむ」西條さんの菜園便り⑱
北海道新聞朝刊連載 平成23年1月13日 掲載コラム
「冬の畑・スプラウト編」
この季節、菜園生活の楽しみは、春に向けた作付けプランを考えることですが、今年は冬の間でも楽しめる、室内栽培に挑戦しています。
まずは、昨年の秋に鉢上げしておいたパセリやルッコラなどです。毎年玄関先に置かれ、冬の間も少しずつ収穫し、我が家の料理に彩りを添えてくれる野菜達ですが、晩秋まで畑で元気な野菜やハーブは、そのまま冬の室内で育てることが出来るようです。更にこの冬は、手軽で短期間に収穫できるスプラウト栽培を始めてみました。
スプラウトとは、モヤシやカイワレダイコンでおなじみの、植物が発芽した新芽野菜のことですが、最近は、ビタミンやミネラルなど栄養が豊富な健康野菜として、いろいろな品種が栽培されているようです。
スプラウト栽培は、家庭にある物をリサイクルして、手軽に始められるところが良いと思います。
僕が準備したのは、果物のプラスチックトレー・梱包材のプチプチシート・ガーゼ・クッキングペーパーなどです。ブロッコリー・そば・レッドキャベツ・ミツバ・空心菜など数種類の種を取り寄せました。当然のことですが、新芽を食べるので、農薬を使っていない専用の種を購入しなければいけません。
僕が実践した栽培法を簡単に説明すると、まずプラスチックトレーの底の大きさに合わせて、プチプチシートを切ります。一皿に3~4枚くらいでしょうか、凸面を上にして並べます。その上にガーゼ(クッキングペーパー)を3~4枚、プチプチシートを巻き込むようにカットして敷き込みました。
次に、表面が浸る程度に水を入れ、前の晩から水につけておいた種を、重ならないようにびっしり並べます。2~3日で芽が出るので、水を切らさないようにし、芽が伸びるまでは、新聞紙などをかけて暗いところで育てます。5㎝位になったら、お日様の当たるところに出して緑化させますが、早く日に当てると伸びが止まるのでタイミングを計ります。水は、毎日交換しながら育て、10日ほどで食べられるようになります。収穫はハサミで切り取りながら、サラダでいただきました。
今シーズンは、スプラウト栽培用に、種を多めに採取しようと思っています。
取り残して棟立ちしてしまった葉物野菜は、「塔立ち菜」として食べられることを昨年知りましたが、残ったものはそのままにして花を楽しみ、最後に種を取っても良いでしょうね。
春からの菜園暮らしの楽しみが、また増えてしまいました。
雪に閉ざされた冬の北海道でも、工夫次第で、冬ならではの栽培を楽しむことが出来そうです。
鉢上げ野菜:右からルッコラ・パセリ・イタリアンパセリ
食べごろのスプラウト:ブロッコリー・ミツバと専用の種
2010年12月27日
北海道新聞連載⑰
北海道新聞連載記事です。
北海道新聞 平成22年12月23日生活面掲載
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「農を楽しむ」-西條さんの菜園便り ⑰「畑の記録」
今年1年間楽しんだ菜園生活を、振り返ってみました。
今年の最大のテーマは、様々なコンパニオンプランツ(共栄植物)を組み合わせた栽培法に挑戦することでした。植物を組み合わせることで、病気や虫の被害を防いだり、作物の生育や味が良くなったりするのかを、試しました。
肝心の作物の成果はというと、まずタマネギとカモミールの混植は、カモミールの成長が良過ぎて、タマネギが日陰になってしまい、生育不足で失敗。その代わりに、豊作のカモミールから、お茶用の花がたくさん収穫できました。
西洋ネギのチャイブを縁取りにして栽培したナスとピーマンは、今までにないくらい良く育ち、晩秋まで収穫を楽しみました。
また、トマトの味が変わるのか、ネギとトマトの混植対ハーブとトマトの混植の味比べは、残念ながらどちらもあまり違いは感じられませんでしたが、大きな問題もなく収穫できたことが何よりでした。
他にもいろいろ試し、混植による効果を期待したのですが、そう簡単に目に見えるような結果が出ないのかもしれません。しかし、畑がたくさんのハーブや野菜でにぎやかになり、多様な植生と、小さな生き物たちが混生する僕の菜園生活は、心と体が癒やされ、豊かな食卓と暮らしを感じるとても良い1年だったと思います。
昆虫による受粉を促す効果のあるハーブのポリジを、カボチャなど実のなる作物と混植したところ、明らかに良い成果が見られた、と畑の仲間たちが話していました。
さて来シーズンに向けて、冬の間の楽しみは、春からの植え付けプランを考えることです。このとき頼りになるのは畑の記録です。何処に何を植えたのか、さらに数年前にさかのぼって記録されていると、とても助かります。作物には、続けて同じ場所で栽培すると、連作障害を起こしてしまうものもあります。記憶力にめっぽう自信がなく、農作業の経験も未熟な自分のために作った菜園記録手帳が「菜園NOTE」です。
野菜作りを始めて、必要な情報を書き留めたりしていましたが、畑を続けてゆくためには、記録も残さなければと思い、使いやすい菜園用の手帳をいろいろ探したのだけれど、無い・・・無かったのです。
現場(畑)で困ったときに役立つ情報、作物の栽培方法や混植の組合せが分かる情報がついた小さな手帳があると良いのに・・・。実はそんな思いで作った「菜園NOTE」がきっかけでコラムを書くことになりました。
(西條正幸・ビオプラス西條デザイン代表)
2009年から発売を開始した菜園ノートは今年で3年目。内容も益々充実して大人気です。
昨年からはご要望にお応えして、カレンダーも登場!
ノートとカレンダーで、菜園生活をお楽しみください。
お求めは、当社サイト、書店、amazon.co.jpにて。
2010年12月14日
北海道新聞連載⑯
北海道新聞連載記事です。
北海道新聞 平成22年12月9日生活面掲載
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「農を楽しむ」-西條さんの菜園便り ⑯「トマトの保存」
畑はすっかり雪化粧、楽しかった菜園生活もしばらくお休みです。
我が家の冬の食卓では、あまりお目にかからなくなる野菜があります。夏から秋にかけて、食卓のテーブルの常連だったトマトです。
スーパーへ行くと、いつでも並んでいるにもかかわらず、冬の間はめったに買って食べることがありません。夏の日差しをあびて育った、まるで太陽のような野菜だからでしょうか。
季節に関係なく、いつでも、どこのものでも手に入る時代ですが、それはそれで、うれしいような寂しいような複雑な気分になります。
そんな我が家の冬の楽しみは、たくさん収穫したトマトを保存して、少しずついただくことです。
野菜作りを始めるまでは、たくさん買い込んでいたホールトマトの缶詰が、すっかり姿を消しました。 昨年までは調理用のイタリアントマトでトマトソースを作り、小分けにして冷凍保存していましたが、今年は初めて、トマトソースの瓶詰めに挑戦しました。
まず、大きめのずんどう鍋にお湯を沸かし、瓶とふたを沈め煮沸消毒します。同時に隣の鍋で、ざく切りにしたサンマルツアーノ(自家製の有機トマト)に、少量の塩を加えてオリーブオイルと一緒に煮込みます。以前は、ニンニクやハーブなどを加えていましたが、結局調理のときに味付けするので、今年は余計なものを入れずにシンプルにしました。
トマトを煮込み終えたら、煮沸し終えた瓶に詰め、すぐに蓋をしてずんどう鍋に戻します。このとき、ふたは一旦きっちり閉めた後、少し緩めます。こうすることで、瓶の中の空気が抜けて密閉状態になります。約20分間、煮沸した後、取り出した瓶のふたをきっちり閉めなおし、瓶を逆さまにして置き冷まします。すっかり熱が冷めたら、日付のラベルを貼って完成です。
今年は400mℓの瓶を12本作りました。冬の間、パスタソースやミネストローネなどにしていただくことになります。
一方、ミニトマトは、ドライトマトにして保存します。半分に切って種を取り、オーブンで乾燥させます。小まめに水気を取りながらゆっくり乾燥させるので、ちょっと面倒でしたが、ドライトマトは、凝縮された味が格別です。正確には半なまドライトマトですが、半分は密閉袋に入れ冷凍保存、残りはオリーブオイル漬けにしました。
ドライトマトの乾燥は、本州では天日干しができるのでしょうが、北海道の路地栽培では、完熟する時期が合わず、少し難しいと思います。種から有機栽培、無化学肥料で育てた我が家の冬のトマトです。
(西條正幸・ビオプラス西條デザイン代表)
丸い形のベルナーロゼ(左)やチェリートマト(右上)、イエローアイコ(その下)など9月に収穫したトマトたち
瓶詰めしたサンマルツアーノのトマトソースと、ブラジルミニをオープン乾燥させたドライトマト
2010年12月14日
北海道新聞連載⑮
北海道新聞連載記事です。
北海道新聞 平成22年11月25日生活面掲載
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「農を楽しむ」-西條さんの菜園便り ⑮「堆肥作り」
楽しかった有機菜園での作業も、まもなく終ろうとしています。僕たちの有機農園の仲間達は、すでに片付けも終わり、冬を迎える準備が出来ているようです。
僕はと言うと、もう一仕事、来シーズンのために、堆肥を積み上げておく作業が残っています。毎年、落ち葉が積もった頃をめがけて、山のわき道や公園の歩道に、集めに行きます。都会では、ゴミ扱いされている落ち葉も、僕にとってはお宝です。
堆肥づくりのための落ち葉集めの注意点は、分解が遅いイチョウやサクラなどの広葉樹や、笹・針葉樹などの葉は避け、ナラ、カエデ、ナナカマドなどを集めるように心がけます。
集めた落ち葉は、大きなビニール袋に詰め込んで、畑に運び込みます。僕の堆肥は、落ち葉に米糠をふりかけ、水をかけて踏みつけて、積み重ねていくだけの簡単なものです。今年は、コンフリーの葉を漬け込んで出来た液肥を、水と一緒にかけてみました。翌年、うまく分解が進み、パラパラと軽い堆肥が出来上がったときには、山の土はこうして出来ているのだと、うれしくなります。今年は、昨年積んだ堆肥を、移植したイチゴの植え床や、不耕起用の植え床に蒔き、藁や片付けた草をかけて冬を越します。水はけが悪く、すぐに硬くなってしまう僕の畑では、こうすることで、土が固くならず、翌年の春、畑仕事が楽しく進んでいきます。
また、来シーズンに向けて、余市の養鶏農家さんから、鶏糞を分けてもらいに行きました。安全な自家製飼料を食べ、平飼で育つ元気な鶏の鶏舎から、鶏糞をスコップですくい集めます。来シーズンは、鶏糞を上手く使った堆肥づくりにも、挑戦したいと思います。
僕達が出来る、循環する暮らしの原点は、街で暮らす人々が、消費するだけの生活から、生産する暮らしを始めることだと思います。ゴミと思われている資源を有効に使い、肥料や堆肥に変え、自家製の野菜や果樹を育て、食べた残葉はまた資源に変わる。単純なことですが、一番身近な暮らしの中にこそ、様々な環境問題を、リアルに感じさせる時間があるように思えます。
(西條正幸・ビオプラス西條デザイン代表)
お知らせ
12月4日(土)午後1時30分から札幌東区で西條さんの菜園生活講座「心地よい暮らしと住い」があります。僕の有機菜園生活と自然派住宅づくりを始めた話を中心に、肌に優しいナチュラル蜜蝋クリームづくりのワークショップを企画しました。
参加費¥1000 (みつばちクリームキット付き) 定員15名
お問い合わせは ビオプラス西條デザイン TEL011-774-8599までどうぞ
集めてきたミズナラの落ち葉を踏みつけながら積み上げ、土をかけた後、ビニールシートで覆い養成します。
鶏舎の床から鶏ふんをすくい集めます。
2010年11月12日
北海道新聞連載⑭
北海道新聞連載記事です。
北海道新聞 平成22年11月11日生活面掲載
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「農を楽しむ」-西條さんの菜園便り ⑭「晩秋の楽しみ」
晩秋になると、菜園生活の楽しみも少なくなってきます。 僕達の有機農園では、今年最後となる月1回の共同作業日を迎えました。(実際には7日です)
この時期の楽しみの一つは、来シーズンに向けての種取り作業です。
まずは、豆。収穫して乾燥させておいた、種豆用マメの皮を剥いて種をとりだします。カサカサした感触とマラカスのような乾いた音は、気持ちが軽やかになるようでとても好きです。さやを食べる豆類も良いですが、完熟の豆も種類がたくさんあり、見ているだけでも楽しくなります。僕の菜園で今年栽培した豆類は、枝豆(茶豆)、白花豆、スナックエンドウ、5種類のインゲンです。枝豆は、背丈ばかりが伸びて肝心の実入りはさっぱりで、トウモロコシとの混植の成果は、見られませんでした。 今年初めて栽培した、白インゲン(銀手亡)は、有機農家さんから、食用に買った豆の残りを、そのまま種豆にしてみました。ちゃんと育つのか、不安だったのですが、約1,5㎏を収穫することが出来ました。来年の種を残して、残りは自家製の保存用トマトと一緒に、スープなどの煮込み料理で頂きます。
レタス・シュンギク・ルッコラなど、葉菜類の採種も大切です。注意するのは、アブラナ科野菜の種を採取する場合です。近くに他のアブラナ科野菜があると交配しやすいので、あらかじめ離したところで、種取り用に育てます。
混植用のマリーゴールドとナスタチウムの種取りは、畑を片付けながら、最後の仕事になります。毎年、霜が降りるまで花を咲かせているので、直前で刈り取ります。マリーゴールドは花冠ごと摘み取り、ナスタチウムは片付けたあとに落ちた種を拾い、乾燥させて保存します。
そして、亜麻も大切にしている植物です。毎年畑の一角を、小さなムラサキの可憐な花が彩ります。茎ごと刈り取って逆さにつるし、しばらく乾燥させます。小さく丸い果皮に小さな種が入っていて、取り出すのはひと苦労です。10年以上前、ドイツの自然健康塗料メーカーを視察した時、工場の周りでは、契約栽培されている亜麻畑が広がっていました。僕が仕事で、自然素材の住宅や家具を作る時に使う天然塗料の主原料は、亜麻の種を搾った亜麻仁油なのです。種を増やし、いつか自家製の亜麻仁油で塗料を作るのが、この頃からの夢でもあります。
最後に、一番大切に育てたのは、2種類のズッキーニです。種を取る株を決めて、元気の良いズッキーニだけを、大きくなるまで育てました。先月収穫していた実から、いよいよ種を取る日が来ました。 自然栽培の農家さんが、スプーンを使い大切に種を取っている姿を見て、今年は僕も真似をして見ました。 やさしくすくった種についた果肉を、水できれいに洗い、乾燥させて保存します。 無農薬・無化学肥料、そして種は自家採取で野菜作り。楽しみはさらに広がります。
(西條正幸・ビオプラス西條デザイン代表)
札幌市丘珠有機農園での今年最後の共同作業。
倉庫の片付けと壁の塗装です。
ズッキーニはブラックビューティーとシマシマ模様のココゼリの2種類から種を取りました。
自家採取用の野菜は、交配種でなく固定種から育てます。
2010年10月28日
北海道新聞連載⑬
北海道新聞連載記事です。
北海道新聞 平成22年10月28日生活面掲載
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「農を楽しむ」-西條さんの菜園便り ⑬「袋栽培の楽しむ」
忙しかった畑作業も、後片付けに追われる季節になりました。収穫できる作物も残り少なくなってきましたね。
僕の畑でも、徐々に片付けを始め、残る野菜は、キャベツ、レタス、白菜、ホウレン草などの葉物野菜、そしてニンジン、ゴボウなどの根菜類となってしまいました。
秋に収穫する予定だったダイコンは、種を蒔きそびれてしまい、もっぱら、仲間のおこぼれに預かっているのですが、これはこれで、いろいろな種類のダイコンを頂けるので、嬉し楽しい気分です。根菜類は収穫後、土に植え込んで、保存します。また、ホウレン草は雪の下で冬を越して、来春一番の収穫野菜になる予定です。
丘珠有機菜園は、水はけが悪く、粘土質の土がガチガチに固くなるので、根菜類の栽培には苦労します。僕は割り切って、収穫しやすいミニサイズのダイコンやゴボウを作っていました。でも、細いゴボウは、掘り起こすのがひと仕事です。そこで今年は、ゴボウの袋栽培に挑戦してみました。
高畝を利用し、堆肥、炭、油粕などを入れて軽く耕起した後、土を入れた不織布の袋を、少し間隔を空けて、高畝に逆さにして並べていきます。そして、袋の底を開いて、ゴボウの種を蒔き、わざと広くした袋と袋の間には、マリーゴールドの苗を植えたのです。
これは、見た目が綺麗なことと、センチュウの被害を防いでくれるコンパニオンプランツ (共栄植物)として、根菜類との相性が良いからです。さらに、高畝の両側の列にカブの種を蒔き、3種の混植栽培にしてみました。
ゴボウの追肥は、草木灰を表土に施肥しただけで、あとは得意のほったらかし状態でした。待ちに待った収穫の日、袋を持ち上げると、崩れた土の中からゴボウが顔を出しました。ちょっと細身のミニゴボウです。初収穫は豚汁。柔らかくてとても美味しいゴボウをいただきました。
袋栽培は、どこでも手軽に、根菜類を栽培出来るところが良いと思います。マンションのベランダやアスファルトの上でも栽培が可能ですし、ダイコンやニンジンのほか、ジャガイモやサツマイモ、長ネギなどの栽培にも便利なようです。来シーズンは、もう少し種類を増やして、栽培してみようと思います。また、袋栽培の他に、古タイヤを積み重ねて利用した栽培法も、同じ効果があります。どちらも資材を再利用して、何度も使え、収穫も楽に出来るところが良いところです。
菜園生活は、ゴミや廃資源を有効利用し、持続可能な暮らしを楽しみながら、実感することも出来る、すてきな暮らしなのです。
(西條正幸・ビオプラス西條デザイン代表)
袋の中でごぼうがすくすく。
袋を持ち上げ、ゴボウを収穫。
袋と袋の間に混植したマリーゴールドが美しく咲き誇っています。