北海道新聞連載記事です。
北海道新聞 平成22年10月14日生活面掲載
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「農を楽しむ」-西條さんの菜園便り ⑫「3種競演」
いよいよ秋本番。天気は気まぐれで、寒暖の差も激しくなってきました。
暑さが収まり、少し元気を取り戻した野菜たちも、徐々に終演を迎えようとしています。
僕の有機菜園で、今年初めて栽培に挑戦した作物の一つに、サツマイモがあります。
何かとお世話になっている、砂川のハーブ農園さんから、金時、紅東、パープルスイ―ツの3種類の苗をそれぞれ一株、思わず衝動買いをしてしまいました。
育て方を聞くと、鶏糞をまき、土を盛って、ビニールマルチを敷き、植え込む。夏までは、あまり雨にあてず、乾燥気味で小さく育て、夏以降一気に成長を促す・・・といったようなアドバイスだったと思います。
でも、この頃はすでに、ほぼ定植や種まきを終えていて、どこに植えたらよいか。そこで思いついたのは、花豆とルッコラをコンパニオンプランツ(共栄植物)として混植した植床です。
すでに1mほどの円形に土を盛った植え床に、ルッコラの種をばら撒きし、その周りに竹竿を立てて、根元に白花マメを植えていました。少し強引ですが、その中央に穴をあけ、ミミズの堆肥を一握り撒き、ちょうど3箇所作っていた植床に、それぞれ一株づつ苗を植え込んでみました。
ルッコラはグングン成長し、見る見るサツマイモの苗をのみこんでいきました。 もともとマルチ代わりに撒いたルッコラが、サツマイモのビニールマルチの代わりになればと思ったのですが、少々生育が良すぎたみたいです。
結果は別として、土の中でヒルガオ科のサツマイモ、表層でアブラナ科のルッコラ、空中でマメ科の花マメの3種類が競演する植床のデザインにすっかり満足してしまった僕です。
ルッコラは、別名「ロケット」と呼ばれる独特の香りと辛味が特徴のハーブの仲間で、白い十字形のかわいい花を咲かせます。 摘み取るとゴマのような良い香りを放つ、大好きな野菜の一つです。
夏の間も元気に育ち、何もしなくても、あまり虫害にあうこともありません。種を自家採種しておき、来年も遠慮せずにたっぷりと使います。
本来の主役の座を明け渡した格好の白花豆は、種豆を撒くのが少々遅かったせいか、10月になっても花を咲かせていました。豆の収穫までもう少しかかりそうです。
そして肝心のサツマイモ。間引かれて隙間が出来たルッコラの間から蔓を伸ばし、収穫の時期がだんだん近づいてきたようです。我が家では、薪ストーブに、新聞紙とアルミホイルでくるんだイモを放り込みます。有機栽培で育てた自家製の3種類の焼きイモを食べ比べることにしましょう。
(西條正幸・ビオプラス西條デザイン代表)
畑の隅に作った円形の植え床で、異なった性格の3種類の野菜を栽培
十字型のかわいらしいルッコラの花(右)と、遅咲きとなった白花豆の花の競演
2010年10月14日
北海道新聞連載⑫
2010年09月28日
北海道新聞連載⑪
北海道新聞連載記事です。
北海道新聞 平成22年9月23日生活面掲載
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「農を楽しむ」-西條さんの菜園便り ⑪「ネバネバ作物」
僕たちの有機農園では、収穫もずいぶん進み、気の早い菜園仲間は、既に畑の片付けを始めています。残暑もようやく収まり、本来の秋らしい気候が戻ってきました。
そんな中、この夏の高温続きで恩恵を受けた作物があります。昨年まで、ビニールのマルチやトンネルをかけずに、露地栽培を続けてきたオクラです。昨年は暖かくなってきた6月の中ほどに、2品種の種をじかまきして栽培していましたが、気温が低いせいか、背丈が低く、多くは収穫できませんでした。
そこで今年は、5月から自宅で育てた苗を移植。気温が上がるまでは、不織布のトンネルを掛けての栽培に変えてみました。プラスチック繊維を畑で使うことに抵抗があったのですが、上手に使うと何度も使えることがわかり、ちょっと妥協してしまいました。また、植え床も昨年までとは違っています。
僕は、一昨年から、肥料に牛ふんや鶏ふんなどの動物性の肥料を使わず、米ぬかや油かすなど植物性の肥料だけを少量使った野菜作りをしていました。有機質の肥料の中でも、使われている原料が単純なので安心感があったからなのですが、今年はここの苗床だけ、鶏ふんを使ってみました。3本の植え床のうち、2本をオクラ専用にし、残りの1本はモロヘイヤです。
トンネルと高い気温のおかげか、今年のオクラの生育はとても良く、今までで最高の収穫を毎日楽しめました。僕が栽培しているのは、一般的な五画オクラと丸い島オクラ、色鮮やかなムラサキオクラの3種です。何と言っても、オクラの花はとてもかれんです。南国っぽい雰囲気も良いですね。また、モロヘイヤは夏でも虫も付かずによく育ち、葉先を摘むと新芽が次々伸びるので、週に2度ほどの間隔で収穫していました。どちらの野菜も、ゆでるとネバネバ感がたまらない健康野菜。納豆と交ぜると絶妙のネバネバ食感を発揮します。
ただ、鶏ふんの影響か、他の作物と比べてみると葉の虫食いが多かったのです。有機質肥料でも、未完熟なものや、使用量を誤ると虫害が多くなるのはこういうことなのか、と実感しました。また、コンパニオンプランツとして混植する植物の見当が付かなかったので、ここは困ったときの万能植物「マリーゴールド」を、それぞれ植えつけてみました。オクラもモロヘイヤも背丈が高く収穫は高い位置ですむので、マリーゴールドは収穫の邪魔にならず、結果オーライです。野菜とハーブの混植では、成長丈や成育域の関係も大切なのだと、また実感しました。
実際に経験すること、感じること、成功、失敗、すべてが菜園生活の楽しみです。
(西條正幸・ビオプラス西條デザイン代表)
よく育ったモロヘイヤを収穫。左後方はマリーゴールドと混植したオクラ
とても美しくかれんなオクラの花
2010年09月09日
北海道新聞連載⑩
北海道新聞連載記事です。
北海道新聞 平成22年9月9日生活面掲載
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「農を楽しむ」-西條さんの菜園便り ⑩「虫から野菜守る」
気がつけばもう秋です、今シーズンの畑仕事も終盤にさしかかってきました。
僕の畑では、例年はお盆を過ぎて涼しくなると、夏バテ気味の野菜たちが元気を取り戻すはずなのに、今年は元気がありません。今までにない暑さと湿度の影響なのでしょうか、畑の環境も変わったような気がします。特に困ったのは、早朝の収穫時に、執拗に蚊の襲来を受けたことでした。
そんな時、僕が使っているのは、手作りの虫よけハーブスプレーです。釣りやアウトドアに20年来使い続けているのですが、無添加で安心、効果も抜群でおすすめです。作り方はとても簡単で、植物性のエチルアルコール1に対して清水2くらいの割合で溶液を作り、好みのハーブの精油を加えるだけです。精油の量は適当なのですが、スプレーして肌で香りを感じるくらいが目安でしょうか。
僕のお気に入りはハッカ、ラベンダー、モミなどを加えたオリジナルブレンド。市販の小さなスプレー容器に入れて畑の道具箱に入れておきます。野菜に農薬をかけないのですから、体にも化学薬品をかけたくありません。
畑の虫といえば、僕たちの有機農園では、イネ科のソルゴーやエンバク、マメ科のヘアリーベッチ、キク科のヒマワリなど虫のすみかになる植物を、畑の境に植えています。「バンカープランツ」(天敵温存植物)といわれ、野菜を守るための植物で、意図的に昆虫たちが集まってくるような仕組みをつくります。害虫を食べてくれる益虫たちが多いせいなのでしょうか、僕の畑では、アブラムシの姿をめったに見ることがありません。逆にアブラムシを食べてくれるテントウムシを見かけると、なんだかうれしくなります。
これらの背の高い植物は、障壁として、近所の畑から飛んでくる農薬を防ぐ「ガードプランツ」(障壁植物)としても役立つことで知られています。また、僕たちの有機農園がある札幌市東区丘珠の〝名物〟である風をよけるのにも役立ってくれているようです。
僕は、障壁として植えたヒマワリやトウモロコシは刈り取らずにそのまま残して、翌年、マメ科やウリ科のつる性植物などの添え木代わりに利用しています。そして、バンカープランツとして植え、役目が終わった植物は、緑肥やマルチ材として利用します。住宅地の菜園でも、このような背丈の高い植物たちを簡単にできるナチュラルな塀としてデザインし、植えてみるといいでしょう。
(西條正幸・ビオプラス西條デザイン代表)
隣地との境界上に並ぶ背丈まで成長したソルゴーの障壁。右側が収穫の進む有機農園=9月初旬
畑の境に昨年植えたヒマワリの茎を刈らずに残して、今年はエンドウやツルムラサキの支柱に利用しました。
=5月初旬の種まき
2010年08月30日
北海道新聞連載⑨
北海道新聞連載記事です。
北海道新聞 平成22年8月26日生活面掲載
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「農を楽しむ」-西條さんの菜園便り ⑨「畑の多様性」
この夏、僕の畑で最も順調に育っている作物といえば、ナスとピーマンです。雨の好きな野菜だからでしょうか?雨の多い今シーズン一番の元気印です。
不耕起栽培用の90cm×3mの高ウネの植え床「レイズドベッド」2畝に、10株ほど植えました。と言っても、植えているのはナスだけではありません。まずユリ科のチャイブを、畝の縁取りに移植しました。更にセリ科のパセリ、キク科のカモミール、ムラサキ科のポリジなど多年草や、こぼれ種から自生えしたハーブ類を、畝の両端に移植しました。ピーマンとシシトウも、となりの畝で同様に栽培しています。ナスやピーマンの苗を植え込む頃には、チャイブやカモミールは花を咲かせ始め、更に夏に近づくと、ポリジが花を咲かせるといった具合です。でも「欲ばりな畑」が自慢の僕です。ナスやピーマンの株間に、つるなし種のスナックエンドウの苗を植えました。
成長して、ナスにつるが上手く絡むと良いなと思ったのです。結果は、エンドウの成長が早く、結局竹の支柱をたてる破目になりました。タイミングを計って、種まきをした方が良かったのかもしれませんね。エンドウの収穫が落ち着く頃、ナスの収穫が最盛期となりました。実は、昨シーズンは種まきをして、苗を作り、定植の際には、根の先端を切り込んでから植えるスパルタ栽培に挑戦したのですが、見事に惨敗。そこで、今年は苗を買い、春先にパオパオのトンネルで風と寒さ対策をし、自家製ぼかし肥料の追肥なども怠らないで、育てたところ、豊作となりました。
ナス科の栽培は4~5年おきに栽培するのが常識で、連作はタブーと言われていますが、来シーズンはあえてナスの連作栽培に挑戦しようかと思っています。相性のよい植物を中心に多様な作物を混植することで、連作障害を緩和できれば、限られた場所の家庭菜園でも毎年楽しむことが出来ると思います。
建築デザイナーの僕が、目標にしている畑作りのテーマは、住宅街の中でも映える、素敵なキッチンガーデンをつくることなのです。野菜や花が、整然と綺麗に並べられた、かわいらしいキッチンガーデンも良いですが、僕の場合は、多様な植物が、ランダムに咲き乱れる、イングリッシュガーデンのような菜園がイメージです。野菜が主役の菜園に、いつも何処かで花が咲き続けている。ハーブ類を混植することで、コンパニオンプランツ(共栄植物)として作物を害虫から守り、成長を助けるだけではなく、緑に彩りを添える役割もあり、畑がより楽しい場所になること請け合いですよ。
(西條正幸・ビオプラス西條デザイン代表)
チャイブの縁取りとハーブでにぎやかなナス科用の植え床
ナス科作物(シシトウ)の間に生育を助け合うマメ科作物(エンドウ)を混植
夏野菜:僕の畑で今元気印の野菜たち
2010年08月30日
北海道新聞連載⑧
北海道新聞連載記事です。
北海道新聞 平成22年8月12日生活面掲載
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「農を楽しむ」-西條さんの菜園便り ⑧「収穫日和」
6月の好天とはうって変わり、曇り空が続いた7月でしたが、野菜たちはすくすく育ち、収穫する作物が増え、畑へ行くのが楽しみな季節になりました。
僕の畑では、ズッキーニの収穫が最盛期です。ズッキーニは有機菜園を始めた時から欠かせない野菜です。その理由は、おいしくて低カロリー。おまけに、焼く、揚げる、煮る、漬けるなど、和食、洋食どちらの料理にも合う万能野菜だからです。
今年は、少しでも早く収穫したいと思い、4月には苗作りを始めたのですが、結局、苗を定植したものも、種を直まきして育てたものも、どちらもさほど変わらずに育っています。ウリ科野菜は直まきで元気で丈夫に育ちますね。
ズッキーニの苗の根の周りには、ワラが敷かれていて、生えてきた雑草も刈り取りながら敷きこむ「草マルチ」のベッドで栽培します。草マルチには、乾燥や泥ハネ、実が痛むのを防ぐ役割があります。
気温の低い北海道では、春先、地温を上げるためにビニールで土を覆う「マルチング」が常識となっていますが、僕は、農薬や化学肥料を使わない自然農園で、化学素材を使うことに抵抗があり、草マルチを続けています。これは僕の仕事の影響でもあります。自然素材にこだわった、「化学物質を使用せずに有機野菜のような家」をデザインすることが、僕の仕事なのです。
さて、いま収穫しているズッキーニは、味が自慢でしましま模様が特徴のイタリア伝統の品種と、日本でもおなじみの濃い緑色の品種の2つです。
霜が降りるころまで収穫は続きますが、その中から、元気に育つ大きな実を一つ選び、完熟し、硬くなるまで残しておいて、秋になったら自家採種します。これが、来年用の種になります。
またこの時期は、ユリ科の野菜のタネ球を収穫する季節でもあります。農作業は月の満ち欠けと関係が深く、満月の前後1週間ほどが、保存用の根菜類の収穫に適していて、すぐに食べる根菜類の収穫は、新月の前後1週間ほどが適していると言う説があります。
7月は、26日が満月でした。 僕もこの時期に合わせて、ニンニクと、島ラッキョウを収穫しました。また、アサツキやワケギのタネ球も一緒に掘りあげて、9月の植え込みまでしばらく保存します。
とは言え、雨が続くと、収穫の時期にも影響するので、暦どおりにはいきません。自然はこちらの都合に合わせてはくれませんが、「月をながめた畑仕事」をしていると、地球や自然が身近に感じられ、大地とつながったような心地よさを感じます。
札幌・丘珠にある僕たちの有機農園の仲間たちが作った有機野菜の一部は、平日午前10時半~午後3時、「㈱HAVE札幌市場」(札幌市東区北34東21)で販売しています。
(西條正幸・ビオプラス西條デザイン代表)
10株植えたズッキーニを収穫。
混植したトウモロコシは種まきが遅すぎて生育不良。
収穫した2種のズッキーニと
ニンニク、ラッキョウ。
2010年08月30日
北海道新聞連載⑦
北海道新聞連載記事です。
北海道新聞 平成22年7月22日生活面掲載
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「農を楽しむ」-西條さんの菜園便り ⑦「ポリジとコンフリー」
雨の日が続くと、作物と一緒に雑草たちもぐんぐん成長します。そんな雑草たちにまぎれて、僕の畑のあちらこちらで繁殖している植物が、いくつかあります。こぼれ種から勝手によく育つ、一年草のハーブたち。白い花のジャーマンカモミール、紫色の花のポリジ、黄色い花のディル。どのハーブも野菜との相性が良いので、僕の畑では自生のままにしたり、移植したり、時には種を取ってまいたりして、いたる所で花を咲かせます。
そんな一年草のハーブの中でも、特にものすごい繁殖力を発揮するのが、ムラサキ科のポリジです。星形でかれんな紫色の花びらには、いつもハチが群れていて、「受粉昆虫を呼び寄せるため、実のなる作物のそばに植えておくと良い」と言われているコンパニオンプランツ(共栄植物)の仲間です。
僕の畑では、イチゴ、トマト、ナス、ピーマン、ズッキーニ、ジャガイモなどのそばで、花を咲かせています。このポリジは、全身に毛が生えてイガイガしているのに、食べることが出来ます。
僕は、春に若葉を天ぷらにして食べました。肉厚の葉は、香ばしい味わいで、なかなか美味。また、薬草としても効果があるといわれていますが、カルシウムやカリウムといったミネラル分を多く含むため、緑肥としての効果も期待できそうです。大きく育った順に収穫し、土や米ぬかと一緒に積み上げ発酵させ、ボカシ肥料作りに挑戦しようと思っています。
そして、最も楽しみにしているのが、同じムラサキ科で多年草のコンフリーです。野草化し、道内でもいたる所で自生しています。春先からみるみる成長し、つり鐘状に咲く紫の花には、ポリジと同じようにハチが群れています。
このハーブもミネラル分がとても多く、緑肥や液体肥料として利用できます。僕は有機液肥を作るため、昨年から育て始めました。7月初旬、花が終わったコンフリーを収穫。大ざっぱに刻み、樽に詰めこんで、水を注ぎ、れんがで重しをして漬け込みました。待ちに待った初仕込みです。
1週間ほどすると、繊維が溶け出し、水が茶色くなり始め、これが真っ黒になると、有機液体肥料の完成です。出来上がった液肥は、水で薄めて、作物の水やりと一緒に利用し、野菜たちのミネラル補給になります。
根を残して刈り取ったコンフリーの株からは、すぐに新しい葉が伸び始めています。1年に3回ほどは、繰り返し収穫できるといいます。また、株分けをして、簡単に増やすことも出来ます。耐寒性もあり、生育にまったく手がかからないので、僕の有機菜園には欠かせないパートナーになってくれそうです。
(西條正幸・ビオプラス西條デザイン代表)
①ジャガイモ畑の中でも負けずに育ち、紫色のかれんな花を咲かせるポリジ
②コンフリーは漬物樽に入れ、れんがで重しをして漬け込む
2010年08月03日
北海道新聞連載⑥
北海道新聞 平成22年7月8日生活面掲載
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「農を楽しむ」-西條さんの菜園便り ⑥「イチゴとニンニク」
札幌・丘珠にある僕の畑では、葉物野菜を中心に収穫が始まっています。これからが、自家製有機野菜が並ぶ、豊かな食卓の始まりでもあります。
たくさん作り過ぎた野菜があると、時には罰ゲームのように、大量の野菜を食べなければなりません。僕の菜園ノートには、昨年の反省が書かれていて「種は少しずつ、時期をずらしてまく」とあります。それなのに、ついつい作り過ぎてしまい、また反省です。
先日は、ニンニクの芽とイチゴの収穫を楽しみました。ニンニクを作り始めて、今年で3年目になります。後志管内余市町の有機農家さんから分けていただいたニンニクの種を受け継ぎ、自家採種の無農薬栽培で、ほぼ1年分の量を作ります。
ニンニクは、連作の障害も無く栽培できるので、夏の収穫が終わり、秋の種の植え付け作業の際には、同じ苗床を使い、側にイチゴを移植しています。成長したニンニクの芽を摘む時期と、イチゴの収穫がちょうど重なり、除草と追肥をしながら収穫が出来るので、作業効率が良いようです。
イチゴは、昨年植えたイチゴ苗が増え、春先数カ所に移植したものですが、順調に育ってくれました。イチゴ専用畑には、チャイブやワケギをコンパニオンプランツ(共存植物)として一緒に植えています。苗の周りには木炭を敷き、ワラのマルチをしてありますが、すき間からでてくる雑草を取りつつ、イチゴの収穫をするといった、得意の「ズボラ菜園」を実践中です。
イチゴと混植したニンニクやネギ類の根から出る成分が、イチゴの病気を抑える効果があり、また、臭いを嫌う害虫の防止にもなるようです。
性格も使い方も違う作物が、夫婦のように助け合って、畑の環境を整えているのは、とても面白いことです。作物の混植の組み合わせには、このような作業性を考慮することも、大切なのだと気付かされますが、僕が習得するには、まだまだ時間がかかりそうです。
昨年収穫したニンニクは、冷暗室で保存していても、春になると芽が出てしまいます。食べられなくなったニンニクは、トマトなど他の作物のコンパニオンプランツとして、脇などに植えたりして使っていますが、今年は来春に向けて良い保存法を勉強しようと思います。
今年のように暑い日が続くと、ニンニクの芽を食べて元気をもらい、菜園作業もがんばりたいです。また、無農薬有機栽培で育ち、安心でしっかりしたイチゴの味は、格別ですね。来年は、さらに子苗をふやして、保存用のジャム作りにも挑戦したいと思っています。
(西條正幸・ビオプラス西條デザイン代表)
チャイブやワケギと一緒に移植したイチゴ畑。
ディルやポリジなど自生したハーブも混色しています。
ニンニク(奥の丈の高い葉)の苗床に植えたイチゴです。
2010年08月03日
北海道新聞連載⑤
北海道新聞 平成22年6月24日生活面掲載
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「農を楽しむ」-西條さんの菜園便り ⑤「トマト」
6月に入って以来、札幌では毎週末、好天が続き、快適な菜園日和を迎えています。雨の多かった昨年とは大違いで、週末ファーマーにとっては農作業も順調にはかどり、うれしいことです。僕たちの有機農園でも、仲間たちが野菜の苗植え作業を楽しんでいます。
僕はというと、果菜類の苗の定植作業を進めています。4月から家の中で苗作りを始め、5月には外のベランダガーデンまでも占領していたトマト、ナス、ピーマン、シシトウ、ズッキーニなどの苗が中心です。
ナス以外の野菜は、自然農法やオーガニック栽培の種を買い集めたもの。昨年は室内だけで苗を育てたためか、ヒョロヒョロの苗になってしまいました。そのため今年は、外で小さな簡易ビニール温室を使い、ミミズコンポストの液肥を時々与えて栽培してみると、トマトの苗などしっかり育ってくれました。
今年のトマト栽培は、木枠で囲った植え床を2本使い、混植の実験に挑戦します。トマトと相性が良いとされる野菜やハーブはたくさんありますが、果たして「何が最も相性が良いのか」「どの組み合わせだとおいしくなるのか」を試してみることにしたのです。
栽培するトマトの種類は、種から苗作りした大玉トマトが1種類とミニトマトが2種類、調理用のイタリアントマトが1種類の合計4種類。それに、苗を作っている農家から頂いたトマトが数種類加わりました。
1本の植え床には、トマトと一緒に、ユリ科のネギ類を数種類と、ニンニク、長ネギ、チャイブなどを混植しました。そして、もう1本には、イタリアンパセリ、レモンバーム、バジルなどのハーブとの混植です。ネギ対ハーブ。さて、どちらの混植が、元気でおいしいトマトを育てることになるでしょうか。収穫の時が、今から楽しみです。
昨年のトマト栽培は、日照不足のせいか、成果はいまひとつで、保存用のトマトもあまり作れませんでした。しかし、豊作だった一昨年は、イタリアントマトは煮込んでトマトソースを作り、ミニトマトはレンジで乾燥させた、セミドライトマトにしてみました。おかげで、冬の間も自家製トマトのパスタやミネストローネをたくさん作り、春先まで楽しむことができました。
夏の間はフレッシュな野菜を、冬は保存した野菜を味わう。同じトマトを食べていても、季節を感じて、冬には冬の野菜の味わいがあるのだ、と改めて気づかされます。
このように、トマト栽培は、収穫後の楽しみも盛りだくさんです。今後も、天候に恵まれて、保存用のトマトがたくさん収穫できれば、と思っています。
トマトと混植したワケギ
ねぎVSハーブ!!
どちらの混植がトマトを美味しく育てるか楽しみ!
2010年08月03日
北海道新聞連載④
北海道新聞 平成22年6月10日生活面掲載
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「農を楽しむ」-西條さんの菜園便り ④「種豆まき」
僕たちの有機菜園がある札幌・丘珠でも、ようやくカッコウの鳴き声が聞かれるようになりました。いよいよ本格的な農作業の「ゴーサイン」です。
今、仲間たちの種まき作業のメーンは、大豆(枝豆)です。僕も昨年、自家製の無農薬・有機みそをつくろうと、大豆作りにチャレンジしました。
畑仲間のTさんが毎年冬、「サッポロさとらんど」で開いている「自家製手づくりみそ教室」がきっかけです。毎年、教室への参加を誘われていた僕は、「みそをつくるなら、まずは自家製大豆作りからだ」と、夢と欲を膨らませ、自家製みそ用の大豆作りを始めたのです。
一昨年までは、枝豆として食べる分だけの大豆を作り、特に問題も無く収穫していました。しかし昨年は、自家製みそ用の大豆作りのため畑の面積を広げ、種をまきっぱなしにしたせいか、さっぱり芽が出ません。どうやら、まいた種が、完全にハトの餌食になってしまったようです。
他の仲間たちは、種をまいた後、畑に不織布をベタかけしたりして、ばっちり鳥害対策をしていたようです。
しかし僕は、冷夏のせいもあって、被害に気付くのがすっかり遅れたうえ、その後のケアも後手後手になり、種豆をまき直した時には既に時遅し。予定の3分の1も収穫出来ずに見事に惨敗。結局、いつものように、枝豆として晩酌のお供にする程度の収穫量に終わったのでした。
そんなこともあり、みその原料は有機農家さんに任せることにして、今年の大豆作りは無理をせずに、一昨年までと同じペットボトルを使った枝豆(茶豆)栽培にしました。
種豆を3粒ほど並べて土をかけた後、底をカッターナイフで切り取ったペットボトルをかぶせます。この方法だとハトに食べられることもありません。また朝方、気温が上がってくると、ボトルの内部が結露して水分を集める役割もあり、ある程度成長するまでは丘珠名物の強風からも守ってくれるのです。
この方法でうまく栽培して、来年の種豆を自家採取できるくらいには、収穫したいと思っています。
一方、枝豆のコンパニオンプランツ(共栄植物)として、マメ科と相性が良いとされるトウモロコシ(イネ科)や、ディル(セリ科)などのハーブを、同じ畝に一緒に種まき・混植しました。
線香花火のような花を咲かせるディルは、サーモン料理との相性が抜群です。フレッシュな葉だけではなく、種子を乾燥させて、ピクルスやドレッシングなどに使うと、一年中草原の香りを楽しめます。残った種子は、翌年、畑にまきます。
今年のビールのおつまみは、有機栽培の枝豆と夏野菜のピクルスで決まりー。今から夏の収穫が楽しみです。
(西條正幸・ビオプラス西條デザイン代表)
枝豆の種まき中。種豆に土をかけた後、底を切り取ったペットボトルをかぶせていく。
これで、鳥、風対策万全。
2010年08月03日
北海道新聞連載③
北海道新聞 平成22年5月27日生活面掲載
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「農を楽しむ」-西條さんの菜園便り ③「植え付け」
札幌・丘珠にある僕たちの有機農園でも、5月半ばには、畑の土起こしが進み、みんな楽しい種まきの準備が整ってきたようです。
毎年、畑の植え付けは、ジャガイモとタマネギから始まります。月暦(陰暦)によると、土の中で育つ野菜(根菜類など)は、満月から月半ばの新月までに植えると良い、とされています。
しかし、天候や土の状態にも影響され、月暦カレンダーにそった作業は、そうそううまくは行きません。今年、僕が植え床を作り終え、ジャガイモを植え付けた時には、新月の2日過ぎになってしまいました。
昨年は、残っていた自家製の小イモをそのまま種イモにしました。堆肥と少量の油かすを元肥にして、追肥なしで育てたせいか、生育はイマイチでした。そのかわり流行のウイルス被害にもあわず、出来たジャガイモを、すべて完食することができました。
市販の種イモを使った一昨年は、半数がウイルスにやられてしまったのに、です。生き残ったイモに免疫があったわけではないでしょうが、出来て見なければわからないのもまた、野菜作りの楽しみの一つです。
今年のジャガイモの定植に当たっては、同じ植え床に、マリーゴールドとポリジをコンパニオンプランツ(共栄植物)として混植してみました。
マリーゴールドは、どんな植物にでも合うオールマイティーなコンパニオンプランツのエースです。特に、ジャガイモなどの根菜類と混植すると、天敵である線虫などの害虫を防ぐ効果がある、とされています。
また、茶色と緑色だけの畑に、手軽に彩りを添えてくれるので、畑が楽しくなります。種まきから始めると、晩秋の霜が降りるころまで、花を咲かせています。種は、自家採取でたっぷり取れるので、毎年、畑中に思いっきり利用しても使い切れません。
一方、タマネギの植え床には、カモミールとクリムソンクローバーを混植しました。弱った野菜を元気にするといわれるキク科のカモミールは、かれんな花を咲かせ、収穫して乾燥させると自家製ハーブティーが作れます。リンゴのような香りは気分を和らげ、安眠効果もあるので、わが家の夜のティータイムには欠かせません。
また、赤いイチゴのような花を咲かせるクリムソンクローバーは、タマネギの害虫をおびき寄せ、おとりになる効果があります。カモミールと一緒に切り花にしてグラスなどに添えると、とてもかわいらしいです。
畑の空間をうまく使って植物を仲良く混植すると、作物の生育を助けるばかりでなく、僕たちの生活を豊かにしてくれる相乗効果もあるのです。特に今年は、友人から札幌の伝統品種でとても珍しいタマネギ「札幌黄」の苗を少しもらって、一緒に植えました。上手く出来るか、楽しみがもう一つ増えました。
(西條正幸・ビオプラス西條デザイン代表)
ジャガイモの種芋を植え付ける友人親子。
タマネギとカモミールの苗は、仲良く混植。